新たなジムクロウ 大量投獄に見る隠された人種差別

30分
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放送日: 
2010/3/11(木)

ジム・クロウ法とは、奴隷解放後も黒人差別を続けるため南部で施行された人種隔離法の総称です。1960年代の公民権運動によってジム・クロウ法は撤廃されました。でも実は人種カースト制は廃絶されず、刑事司法制度を通じて今も維持されていると、法学者ミシェル・アレグザンダーは言います。現在、米国で投獄中や保護観察中のアフリカ系男性の数は、南北戦争以前の奴隷の数よりも多いのです。

新たなジム・クロウ法の始まりは、1982年のレーガン大統領による麻薬撲滅宣言でした。麻薬撲滅作戦の目的は麻薬犯罪の増加に対処するためではありません。取締りのターゲットを黒人貧困地区にしぼった人種管理政策でした。麻薬犯罪と黒人を結びつけるため、広報スタッフを雇ってイメージキャンペーンを行ったそうです。多数の黒人男性を投獄することによって、人種隔離法の廃止やマイノリティ優遇措置に脅威を感じていた白人貧困層の支持を、民主党から引き剥がそうとしたのです。共和党の「南部戦略」と呼ばれるこの作戦は大当たりで、伝統的に民主党支持が強かった南部の貧困白人層を、いっきに取り込むことができました。

取り締まりの目的は麻薬組織の摘発や大物の逮捕ではなく、貧しい黒人を牢屋に入れることです。麻薬取締官たちは、逮捕者数さえ増えれば褒賞され、おまけに容疑者から押収した金品を返す必要もなく、逮捕すればするほど得をする仕組みになっています。逮捕者は激増しました。ほとんどが軽犯罪者です。1990年代には逮捕者の8割は、ただのマリワナの不法所持だったそうです。

でも、いったん刑務所に入ると、普通の社会に戻るのは困難です。重罪犯の前科があると選挙権を奪われ、陪審員の資格も失い、雇用や住居や教育や福祉などでも合法的に差別されます。ゲットーでの麻薬摘発によって数百万人が軽罪のために重罪人の烙印を押され、二級市民の身分に落とされているのです。

このような人種カースト制の再現を見えにくくしているのが、マイノリティ優遇措置によって名門大学や上級職に散らばった少数の黒人エリートたちです。限定的な黒人中上流階級の存在が、進歩の幻想をつくり出すからです。そのきわめつけがオバマ大統領だということもできるでしょう。一見、人種平等を達成したかのような初のアフリカ系大統領の誕生も、じつは根深い人種差別を隠すマスクなのだとゲストは指摘します。(中野)

ゲスト

*ミシェル・アレグザンダー (Michelle Alexander) The New Jim Crow: Mass Incarceration in the Age of Colorblindness(『新たな黒人隔離:大量投獄に見る隠された人種差別』)の著者。カリフォルニア北部ACLU(米国自由人権協会)人種公正プロジェクトの元主任。現在はオハイオ州立大学のモーリッツ校とカーワン人種民族研究所の両方に籍を置く

字幕翻訳:字幕翻訳:玉川千絵子/校正:大竹秀子
全体監修:中野真紀子・付天斉

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