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左派シリザ党が歴史的勝利 ギリシャが最前線を行く欧州の反緊縮の闘い
1月末のギリシャの総選挙でシリザ党(急進左派連合)が勝利を収め、公約どおり「緊縮政策の撤廃」に動き出したことは、欧州各地にみられる左派の台頭を象徴するような事件でした。ギリシャの債務危機を巡っては、これまで何度か取り上げてきましたが、ユーロ圏諸国、欧州中央銀行、IMFの3者による救済パッケージには過酷な財政緊縮政策の実施が組み込まれており、債務を返済するために自国民の生活を破壊するような内容です。救済されるのは民間銀行なのに、そのツケは国民が負担する、例のパターンです。5年にわたって緊縮政策を続けた結果、ギリシャでは中産階級が激減し、既存の中道政党は右派も左派も支持基盤を失ったと、ゲストのパナヨタキス氏は指摘します。その結果、弱小政党だったシリザが有権者の反緊縮の声を代表する存在となり、政府に送り込まれたのだと。
そういうわけで、シリザの主張は明快です。「緊縮政策により経済が破壊され、改革どころか現状の維持もままならない。成長できなければ債務の返済もできない。ユーロ諸国はギリシャが自力で立ち直れるように協力すべきだ」と、財務相に就任した経済学者のヤニス・バルファキスは言います。これに対して、欧州勢の中でも意見は割れているようで、なにがなんでも財政規律が最優先だというドイツのかたくなな態度が浮き立つようになっています。ドイツは緊縮政策に固執するあまり、ギリシャのユーロ離脱も仕方がないと言い出しました。ギリシャ程度の経済規模では、ユーロへの影響はたかが知れているという、つれない態度です。
でもドイツは過去に自らが巨額の債務返済に苦しんだ経験があります。二つの世界大戦に敗北したドイツは膨大な賠償金を抱えていましたが、第二次大戦後に欧米諸国が寛大な措置をとり、大幅に債務を減免したおかげで復興が進み、今日の経済大国にのし上がることができたのです。一方的に追い詰めるだけでは何も得られないし、時には危険だということを、ベルサイユ条約がナチズムの台頭を招いたことから各国は学んだはずなのです。ギリシャのチプラス新首相が、いまさらながらドイツに対しナチス占領時代の戦後賠償を要求した背景には、こうした歴史を思い出してほしいという意図があるようです。(中野真紀子)
ゲスト
*コスタス・パナヨタキス(Costas Panayotakis) ニューヨーク市立大学テクノロジー・カレッジの社会学教授で、Rem king Scarcity: From Capitalist Inefficiency to Economic Democracy(『希少性の再創造~資本主義の非効率から経済の民主主義へ』)の著者
字幕翻訳:中野真紀子
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