米政府の経済封鎖による打撃がベネズエラのクーデターの試みを後押し

放送日: 
2019/1/25(金)
再生時間: 
31分

ベネズエラでは今年1月、マドゥロ大統領の二期目就任からほどなくしてクーデタの試みが起こりました。1月24日に野党指導者のフアン・グアイド国民議会議長が、マドゥロの就任は正統性がないとして自ら臨時大統領を名乗り、米国は即刻グアイドを承認し、親米諸国もそれに続きました。しかし、グアイド議長の呼びかけに応じる国民は少なく、軍もマドゥロ支持を表明し、クーデターの試みは失敗しました。それでも主要メディアの注目と米国を後ろ盾にグアイドはマドゥロ政権への揺さぶりを続けており、こう着状態が続いています。

マドゥロ大統領は、経済政策の失敗による物価急騰や公共サービスの低下によって急速に国民の不満が高まり、反民主的な姿勢もあって、チャベス政権を強く支持してきた人々も多くが離反しています。問題だらけなのは間違いないのですが、それでも野党側も人気がなく、グアイドが蜂起を呼びかけても誰も動きません。野党は一枚岩ではなく、伝統的な保守政党は穏健派でマドゥロ政権との話し合いに応じる構えでしたが、グアイドのような右翼の強硬派が交渉を拒否して対決をあおっているのだと国内状況に詳しいゲストたちは言います。

国民の不満は経済危機によるものですが、非人道的なまでの危機に陥ったのは米国主導の経済制裁が大きな要因です。制裁措置は2015年にオバマ政権の下で始まり、2017年以降に強化されました。米国の金融機関はベネズエラ政府や国営石油会社との取引を禁じられているため、米国での石油収益を本国に送金できません。また、ベネズエラ政府は対外債務の借り換えもできません。世界中のビジネスがベネズエラとの取引を手控えるようになり、事実上の経済封鎖に近い状態になっています。

今回のクーデターは2017年頃から周到に準備が進められていたもので、米国側でこれを推進するのは、亡命ベネズエラ人が多く住むマイアミ(フロリダ州)が地盤のマルコ・ルビオ上院議員です。政権内ではネオコンのジョン・ボルトンやイラン・コントラ事件で有罪になったエリオット・エイブラムズです。この顔ぶれを見れば明らかなように、彼らは「ピンクの潮流」と呼ばれる左派寄りの政権の台頭で中南米が経済ナショナリズムと対米自立の動きを強めた時代からの巻き返しを図っています。チリのピニェラ、ブラジルのボルソナロのような右翼政権の誕生を背景に、「ピンクの潮流」の本丸であるベネズエラとキューバに攻撃を仕掛けているようです。キューバに対しても、ふたたび米国人の観光旅行を制限する措置がとられました。

しかし、一度「ピンクの潮流」を経た中南米諸国がそんなに簡単に「米国の裏庭」に戻るものでしょうか?メキシコのロペス・オブラドール大統領の誕生が「ピンクの潮流」の大きな支えになっていますし、中国やソ連も口を挟むようになっています。またつい最近、ブラジルのボルソナロ政権誕生の際に邪魔だったルラ元大統領の投獄が政治的動機によるものだと示す内部文書が「インターセプト」によって暴かれ、大きな政治スキャンダルなる可能性もあり、ますます目が離せません。(中野真紀子)

ゲスト

*アレハンドロ・ベラスコ(Alejandro Velasco):ニューヨーク大学准教授、専門はラテンアメリカ現代史。北米ラテンアメリカ会議(NACLA)の機関誌『南北アメリカ大陸レポート』の編集長。『バリオの反乱~~都市部の大衆政治と近代ベネズエラの形成』の著者。
*スティーブ・エルナー(Steve Ellner):ベネズエラのオリエンテ大学の元教授。現在はLatin American PerspectivesLatin America’s Radical Leftの編集者。『ピンクの潮流の経験~~21世紀ラテンアメリカの大躍進と欠点』を出版の予定。

字幕翻訳デモクラシー防衛同盟(千野菜保子・仲山さくら・水谷香恵・山下仁美・山田奈津美・岩川明子)/ アオキなな
全体監修:中野真紀子

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