ニューディールを支えた女性 ルーズベルト政権の労働長官フランシス・パーキンスの人生

2009/3/31(Tue)
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現在の米国の金融危機は、世界大恐慌以来の最悪のものと言われています。現在の状況と1930年代との比較から、フランクリン・デラノ・ルーズベルト大統領のニューディール政策が再び注目されています。

ニューディール政策は1933年から数年間のうちに導入された一連の政策により米国経済を大恐慌から救い出しました。金融事業に規制を加え、思い切った公共事業投資によって需要と雇用を創出したのに加え、政府による社会保障のプログラムを導入しました。

1935年からのニューディール第2波では、労働者の福祉を重視した立法が進められました。全国労働関係法(ワグナー法)は労働者の権利を守る画期的な法律で、労働者の団結権と団体交渉権、不当労働行為の禁止などが定められて、米国の労働組合が飛躍的に拡大しました。もう一つ重要なのは社会保障法で、年金制度や失業保険、生活保護などを導入し、米国の社会保障制度の骨格をつくりました。

こうした社会主義的な立法の策定にあたり、ルーズベルト政権内で最も影響力のあった人物は、米国初の女性閣僚フランシス・パーキンス労働長官だったと論じる本が最近出版されました。著者のカーステイン・ダウニーは、論じています。

ルーズベルトがNY知事だった時代、産業局長に任命されたパーキンスは州の労働法改革の中心となり、労働環境や雇用条件の改善を実現させました。労働長官に就任する条件として動揺の政策の推進を支えることを大統領に約束させ、それがニューディール政策の原案になったとダウニーは言います。

週40時間労働、労災保険制度、失業手当、児童労働の禁止、社会保障などを実現させ、国民健康保険にも取り組んだパーキンスの精力的な働きの原点にあるのは、1911年3月ニューヨークで起こった工場火災で150人の子供たちが犠牲になった悲惨な事件でした。(中野真紀子)

カーステイン・ダウニー(Kirstin Downey)
The Woman Behind the New Deal: The Life of Frances Perkins, FDR’s Secretary of Labor and His Moral Conscience. (『ニューディール政策を支えた女性:フランクリン・ルーズベルト政権の労働長官で彼の良心の支えとなったフランシス・パーキンスの人生 』)の著者。ワシントンポスト紙の記者を長年つとめ、同紙のバージニア工科大大学銃乱射事件の報道でピュリッツアー賞を共同受賞した。

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字幕翻訳:田中泉  校正:桜井まり子

全体監修:中野真紀子・付天斉