ウクライナ危機を煽るのはだれ? 米露の役割を検討

放送日: 
2014/3/3(月)
再生時間: 
35分

ウクライナ危機をめぐっては、米国とロシアが互いに相手側の干渉をなじって議論はまったくの平行線です。3月初めに行われた番組討論会は、その典型的なものです。ロシア軍が海軍基地のあるバラクラバを制圧し、クリミアからは一歩も引かない構えを示してから一気に緊張が高まりました。

歴史学者のティモシー・スナイダー教授は、この事態を引き起こしたのはプーチン大統領が巨額の経済援助でヤヌコビッチ大統領の民衆デモ弾圧を支援したことがきっかけだといいます。それが裏目に出て、逆にヤヌコビッチ失脚という事態になってしまったら、今度はその動きがロシア国内の共鳴を呼ぶのを防ぐために軍隊を送ってウクライナが混乱しているという印象を作り上げたのだという説明です。そればかりか長期的には、西洋的な価値観を否定し、マイノリティの権利を否定したいのだと。

これに対し、元CIAアナリストのレイ・マクガバンは今回も典型的なCIA手法のクーデターだといいます。ただし、いまはCIAにはそのような活動が許されておらず、代わって国務省が秘密工作をしているのだと説明します。クーデター前からヤツェニュク首相就任を画策する電話の会話がリークされたヌーランド国務次官補も、もう少しで米国をシリアとの戦争に引っ張りこむところだったケリー国務長官も、まさにブッシュ時代に隆盛を極めたネオコン勢力の代表です。

両者の意見が大きく食い違うのは、出来事の起点をどこに置くかです。マクガバンは、以前に紹介したスティーブ・コーエン教授と同様、ウクライナとロシアの強い歴史的な絆(キエフ大公国がロシアの起源)や、ソ連時代に領土を割譲した経緯などの特殊事情に触れ、EU加盟という文句でNATOが着々と東に拡大することがロシアを神経質にしていると指摘します。でも、スナイダーにはそうした過去は通用しません。「ソ連はもう25年も前に消滅した」という言葉で、一切の過去のしがらみは却下され、ウクライナはあくまでも独立国家として独自の理想を追求する権利がある(たとえ財政的にはすでに破綻しており、政治的に安定したことが一度もなくても)、国際法は遵守しなければならないと主張します。すべては自分達が決めた日付から始まり、過去の歴史などいっさい無視というのは、イラク戦争のときとまったく同じネオコン思想です。

ま、そんなこんなで、双方の主張に突っ込みどころを考えながら鑑賞するにはなかなか面白いディベートといえましょう。(中野真紀子)

ゲスト

*ティモシー・スナイダー(Timothy Snyder) イェール大学の歴史学教授。専門は中欧および東欧の近代ナショナリズム。『流血の地 ヒトラーとスターリンに挟まれたヨーロッパ』の著者。

*レイ・マクガバン(Ray McGovern )元CIA 上級分析官で大統領日例指示(PDB)の作成や国家情報評価(NIE)の主任を務めた。27年間の勤務の最初の10年はロシアの外交政策を担当した。現在は米国情報機関OBらが結成した諜報活動の乱用を批判する団体VIPS(Veteran Intelligence Professionals for Sanity)の運営委員を務める

字幕翻訳:中野真紀子 / 校正:桜井まり子

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