「ファシズムは、こう機能する」ジェイソン・スタンリー(1)トランプ、ボルソナロ、世界的なファシムズの台頭

2018/10/11(Thu)
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ファシズム的な傾向は世界各国で見られるユニバーサルな現象になっていますが、この傾向について米国人が見落としがちな視点を提供するタイムリーな書籍が出版されました。

著者のイエール大学の哲学教授ジェイソン・スタンリーはホロコースト難民の子で、かつ母親が長年ニューヨークの刑事裁判所に勤めていたことから黒人の大量収監の実態についても子供の頃から認識していました。そんな彼には、トランプ政権下の米国がとくに従来の社会規範から大きく逸脱しているようには見えないのです。

米国にはもともとファシズム傾向があったと彼は指摘します。第二次世界大戦前の米国は、露骨な人種差別がピークに達しており、アドルフ・ヒトラーも米国の南部同盟や黒人隔離政策(ジム・クロウ法)からインスピレーションを受けたと言っているくらいです。トランプの台頭で「フェイクニュース」がキャッチワードになり、従来の報道の規範が大きく揺らいでいると捉えられていますが、それを逸脱とみるのはメインストリームの錯覚です。少数派から見れば、偽ニュースは何も目新しいものではありません。非白人、特にアフリカ系住民を貶める人種偏見に満ちた偽ニュースは長年にわたって垂れ流されており、問題にされることはありません。国民の一部を偽ニュースで攻撃することが当たり前になった社会では、それを一歩進めて、誰でも攻撃対象にするフェイクニュースがでてきても驚くに足りません。道徳的に異常なことが繰り返されるうちに、それが普通の状態となり、かつては許しがたかったことも受け入れられるようになる。それがファシズムの蔓延をもたらします。

こうしたファシズムの一歩手前の現象を、現代社会の中に見出すことは難しくありません。ロングインタビューの導入にあたる第一部では、歴史的なファシズムの特徴を「ファシズムの10の柱」として列挙しています。それぞれの要素は互いに有機的につながり合い、ファシズムのイデオロギーを作り上げています。この兆候が見られたら要注意のようですが、日本もかなり思い当たるふしがありますね。続きの第二部も近日中にアップします。(中野真紀子)

*ジェイソン・スタンリー(Jason Stanley):イェール大学哲学教授。新著How Fascism Works: The Politics of Us and Them(『ファシズムは、こう機能する~~われわれv.s.やつらの政治』)が出版されたばかり。前著はHow Propaganda Works(『プロパガンダはこう機能する』)。

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字幕翻訳:デモクラシー防衛同盟
千野菜保子・仲山さくら・水谷香恵・山下仁美・山田奈津美・岩川明子
全体監修:中野真紀子