ファシズム

近年のカトリック教会はスキャンダルまみれで、同性愛者や女性の司祭を認めない偽善性に加え、幼児性愛嗜好の神父たちによって多数の被害者が出ていることがドイツやアイルランドや米国で暴露されました。ベネディクト16世は早いうちから事態を知りながら、犯罪者をかばって組織的なもみ消しを図り、それが被害の拡大につながったようです。イタリア人のあいだでも教会不信は頂点に達し、教皇の退位を求めるデモも起きました。長い歴史を誇る組織が、ボルジア以来といわれる途方もない頽廃に陥ったことには、なにがしかの説明がほしいものです。元カトリック司教マシュー・フォックスによれば、今日の惨状の原因は、がちがちの教条主義者ベネディクト16世が、ラッツインガー枢機卿と呼ばれていた時代に異端審問を復活させ、教会内部の異論を摘発し、排除したことにあります。
ムスリム撲滅の使命に燃えるエリック・プリンスのような狂信者とは異なり、米国のキリスト教右派の中にはもっと実利的で、力と支配を追求する勢力もいるようです。世間には知られない最強のキリスト教原理主義運動といわれるのが、「ファミリー」と呼ばれる政治秘密結社です。有力メンバーには、米国の連邦議員や財界人、軍幹部、また外国の国家元首などが名を連ね、共和党も、民主党もなく、すべての党派に勢力を分散させ、「聖書資本主義」と呼ばれる徹底した自由競争を追求します。まさに市場の「見えざる手」への信仰なのです。『ファミリー』の著者ジェフ・シャーレットが、この秘密集団について驚くべき発見を語ります(19分)
ドミニオニズムは宗教運動としてよりも、ファシズム運動としてとらえるべきだとヘッジズは主張します。共和党=企業権益や保守層と、権威主義的な服従を要求するキリスト教右派の結びつきは、ファシズムに典型的な野合であり、ワイマール共和国で労働者や中産階級の没落を利用してファシストが台頭したのとおなじように、グローバリゼーションの進展で困窮に追いやられる労働者や中産階級の不満と怒りを、宗教的な救済でからめ取り、彼らの絶望を食い物にして絶対支配を打ちたてようとするのだと。 戦争請負企業ブラックウォーターや移民排斥問題などの背後には、この勢力の影がちらつきます。
クリス・ヘッジズの新著は、ドミニオニズム(支配主義)運動と呼ばれる比較的新しいキリスト教右派を取り上げています。選挙における絶大な力を通して共和党に大きな影響力をふるうこの運動は、アメリカにキリスト教国家を打ち立て、絶対権力を握ることを目指しています。彼らがのし上がってきた背景は1920年代から30 年代にかけてのイタリアやドイツのファシズム草創期に酷似していると、ヘッジズは警告します。