キリスト教右派

9・11後の米国市民のテロへの不安につけこんで、イスラムへの恐怖と嫌悪を売り込むネットワークの仕組みを解明する報告書が出ました。"Fear Inc: The Roots of the Islamophobia Network in America" (恐怖会社:米国のイスラム嫌悪ネットワークのルーツ)」と題された米国進歩センター(Center for American Progress)によるこの報告書は、「安全保障政策センター」などもっともらしい名前をつけた団体の「専門家」5人が主に7つの財団の寄付を受け書籍や報告書、ウェブサイト、ブログ、綿密に練り上げた反イスラム的な話題の発信源となりイスラム嫌悪を撒き散らしている様子を明かにしました。(14分)
2007年イラクのニソール広場民間人銃撃事件など数々の不祥事を起こした民間軍事請負会社ブラックウォーター(Xe社に社名変更)創業者、エリック・プリンスが新事業をおこしました。スケイヒルによると、プリンスは部下5人がニソール広場事件で起訴された後、ブラックウォーター社を売却、2010年にアラブ首長国連邦(UAE)に移住しました。「インディ・ジョーンズのように歴史を教えたい」と言ったそうですが、移住後まもなく、アブダビのモハメド皇太子に事業をもちかけ、800人の部隊からなる「リフレックス・リスポンセズ」社(通称R2)を設立、UAE内外の治安維持にあたる契約を結んでいたことがわかりました。アラブ世界で巻き起こっている民主化運動がUAE内で起こった際の鎮圧も任務に含まれています。
2009年5月のギャラップ調査では、米国で妊娠中絶に反対する人(pro-life)の数が妊娠中絶を選ぶ権利を支持する人(pro-choice)の数を1995年以来、初めてうわまわりました(51%対42%)。レイチェル・グレイディとハイディ・エウィングのドキュメンタリー映画『12th and Delaware(デラウェア通り12丁目)』は、日常生活の中で正面切って論じられることが少ないけれど米国を2分する、静かだけれども凄絶なこの闘いを描きます。
元共和党副大統領候補サラ・ペイリンは、ティーパーティー運動の波に乗って人気は抜群、2012年の有力大統領候補です。ジュリアン・アサンジはオサマ・ビンラディンと同じだと言ってみたり、朝鮮の北と南を間違えたり、相変わらず話題に事欠きません。でも、彼女の背景にあるキリスト教右派の政治目標を考えれば、彼女の宗教観が政治決定に影響することが危惧されます。
50年前マッカーシー議員や極右団体から攻撃されたアイゼンハワー大統領は、「彼らはそんな資格も専門知識もないのに、ただ騒ぎ立てることで意見を押し通そうとする」と党内の急進派の台頭を懸念しました。今の共和党の状況を不気味なほど言いあてていると、マックス・ブルーメンソールは語ります。共和党はキリスト教右派に乗っ取られてしまい、アイゼンハワーの共和党はいまやサラ・ペイリンの党になったのです。
ムスリム撲滅の使命に燃えるエリック・プリンスのような狂信者とは異なり、米国のキリスト教右派の中にはもっと実利的で、力と支配を追求する勢力もいるようです。世間には知られない最強のキリスト教原理主義運動といわれるのが、「ファミリー」と呼ばれる政治秘密結社です。有力メンバーには、米国の連邦議員や財界人、軍幹部、また外国の国家元首などが名を連ね、共和党も、民主党もなく、すべての党派に勢力を分散させ、「聖書資本主義」と呼ばれる徹底した自由競争を追求します。まさに市場の「見えざる手」への信仰なのです。『ファミリー』の著者ジェフ・シャーレットが、この秘密集団について驚くべき発見を語ります(19分)
Xe社と社名を変えてみても、ブラックウォーター時代の悪行は消せません。次々とスキャンダルが発覚していますが、今回は創業者エリック・プリンスの宗教的な背景に焦点を当てます。新興の民間傭兵会社ブラックウォーターが急速に勢力を伸ばした背景には、米国で隠然とした力を持つ急進的キリスト教右派の運動が大きく関わっています。 ブラックウォーター社の元従業員2人が2009年8月に連邦裁判所に提出した宣誓陳述で、エリック・プリンスが同社の犯罪を捜査するFBIに協力した人々の殺害に関与した疑いが浮上しました。イラク人殺しを奨励したという証言もあります。プリンスの直接犯罪関与についての内部の人間による初めての証言です。(15分)
クレイグ・アンガー記者は新著『ブッシュ家の崩壊』で、ブッシュ政権下でネオコンたちがキリスト教右派と秘かに同盟し、イラク開戦に向けて好戦機運を煽った過程を検証しています。中東紛争は、イスラム対西洋の対立を軸としてとらえられがちですが、アンガーはそれに対して原理主義という別の視点から見てみようとする試みだといいます。ユダヤ教、キリスト教、イスラム教それぞれに原理主義はあります。アンガーに言わせれば、ネオコン(新保守主義)も世俗的な衣をまとった原理主義です。啓蒙主義を経た近代社会とは相容れないこうした勢力の巻き返しが、現在の事態の大きな背景を描いていると彼は述べます。(30分)
ドミニオニズムは宗教運動としてよりも、ファシズム運動としてとらえるべきだとヘッジズは主張します。共和党=企業権益や保守層と、権威主義的な服従を要求するキリスト教右派の結びつきは、ファシズムに典型的な野合であり、ワイマール共和国で労働者や中産階級の没落を利用してファシストが台頭したのとおなじように、グローバリゼーションの進展で困窮に追いやられる労働者や中産階級の不満と怒りを、宗教的な救済でからめ取り、彼らの絶望を食い物にして絶対支配を打ちたてようとするのだと。 戦争請負企業ブラックウォーターや移民排斥問題などの背後には、この勢力の影がちらつきます。
クリス・ヘッジズの新著は、ドミニオニズム(支配主義)運動と呼ばれる比較的新しいキリスト教右派を取り上げています。選挙における絶大な力を通して共和党に大きな影響力をふるうこの運動は、アメリカにキリスト教国家を打ち立て、絶対権力を握ることを目指しています。彼らがのし上がってきた背景は1920年代から30 年代にかけてのイタリアやドイツのファシズム草創期に酷似していると、ヘッジズは警告します。