ニューヨークの独立放送局Democracy Now!を日本語でおとどけしています
ナオミ・クライン:究極の危機「気候変動」を利用して軍国主義が台頭?
放送日:
2011/3/9(水)
再生時間:
16分
民主主義の否定に利用されかねない最大の危機としてクラインが恐れるのが気候変動です。ここ数年で気候変動を信じる人の割合は急激に減少しましたが、その現象は英語圏に偏っています。その理由は、気候変動を信じるかどうかはもはや科学ではなく政治信条の問題になっているからだと、クラインはオーストラリアの政治学者クリーブ・ハミルトンの論考(かつて相対性理論をめぐる論争が政治論争化したこととの興味深い比較)を紹介します。
気候変動を信じないことは、いまや右派にとって右派であることの証明です。彼らが信じない理由は、気候変動論は「富の再分配を狙った社会主義者による陰謀」だからです。こんな言いがかりつけて忌み嫌うのは、気候変動に有効な対策をとろうとすると、ことごとく右派の主張を否定しなければならないからです。エネルギー効率を考えれば、輸送によるロスを抑える地産地消が必須になりますが、それは「自由貿易」の終わりを意味します。そして先進国は自分たちが引き起こした問題の被害者である途上国に、つけを支払わなければなりません。自由貿易とグローバル化という右派の2枚看板を下ろし、富の再分配によって南北格差を是正するように迫られます。
右派ばかりではありません。政治や経済の論争にはかかわりたくない大手の環境団体も、無限の成長をもとめる資本主義経済が問題なのだという事実に向き合わず、「環境資本主義によって現在の生活は維持できる」とごまかし、小手先の対策に賛同します。先進国が打ち出してくる気候変動対策は、欧米のライフスタイルを変えるのは無理で現在の生活水準を犠牲にすることはできないという前提に立っています。CO2排出をただちに大削減することは政治的に難しいので、途上国の森林保護で代用が可能だということにしたり、バイオ燃料作物の栽培にすりかえたりする。でもこうした「対策」が、途上国の危機をさらに悪化させるのです。
そうする一方で、化石燃料の使用はどんどん危険な方向に進んでいます。簡単に採掘できる資源は掘りつくしてしまい、これからは危険で難しい場所を高度な技術で採掘する「極限エネルギー」の時代になります。深海油田の掘削やタールサンドの利用、天然ガスのフラッキングなど、危険性が高く環境や生態系を危険にさらすものばかりです。事故が起こったときの被害も、これまでとは比べものにならない、はかりしれない規模のものです。1年前にメキシコ湾岸で起きたBPの深海油田掘削基地の爆発による原油流出事故は湾岸一帯の自然や経済や社会に壊滅的な打撃を与え、いまだにその被害の全貌は明らかではありません。
海底の油田から噴出した厖大な量の原油は、「海は広いから心配ない、流出した原油は自然に吸収された」という当局の説明とはうらはらに、いまだに海中にも海底にも大量に残留しています。目には見えなくなっていますが、広範囲な海洋汚染が微生物に吸収され、将来どのような被害をもたらすかは、今はわかりません。それでも「安全宣言」が出され、危険な掘削は続きます。クリーンなエネルギーとして推進される原発の事故もまったく同じパターンです。(中野)
気候変動を信じないことは、いまや右派にとって右派であることの証明です。彼らが信じない理由は、気候変動論は「富の再分配を狙った社会主義者による陰謀」だからです。こんな言いがかりつけて忌み嫌うのは、気候変動に有効な対策をとろうとすると、ことごとく右派の主張を否定しなければならないからです。エネルギー効率を考えれば、輸送によるロスを抑える地産地消が必須になりますが、それは「自由貿易」の終わりを意味します。そして先進国は自分たちが引き起こした問題の被害者である途上国に、つけを支払わなければなりません。自由貿易とグローバル化という右派の2枚看板を下ろし、富の再分配によって南北格差を是正するように迫られます。
右派ばかりではありません。政治や経済の論争にはかかわりたくない大手の環境団体も、無限の成長をもとめる資本主義経済が問題なのだという事実に向き合わず、「環境資本主義によって現在の生活は維持できる」とごまかし、小手先の対策に賛同します。先進国が打ち出してくる気候変動対策は、欧米のライフスタイルを変えるのは無理で現在の生活水準を犠牲にすることはできないという前提に立っています。CO2排出をただちに大削減することは政治的に難しいので、途上国の森林保護で代用が可能だということにしたり、バイオ燃料作物の栽培にすりかえたりする。でもこうした「対策」が、途上国の危機をさらに悪化させるのです。
そうする一方で、化石燃料の使用はどんどん危険な方向に進んでいます。簡単に採掘できる資源は掘りつくしてしまい、これからは危険で難しい場所を高度な技術で採掘する「極限エネルギー」の時代になります。深海油田の掘削やタールサンドの利用、天然ガスのフラッキングなど、危険性が高く環境や生態系を危険にさらすものばかりです。事故が起こったときの被害も、これまでとは比べものにならない、はかりしれない規模のものです。1年前にメキシコ湾岸で起きたBPの深海油田掘削基地の爆発による原油流出事故は湾岸一帯の自然や経済や社会に壊滅的な打撃を与え、いまだにその被害の全貌は明らかではありません。
海底の油田から噴出した厖大な量の原油は、「海は広いから心配ない、流出した原油は自然に吸収された」という当局の説明とはうらはらに、いまだに海中にも海底にも大量に残留しています。目には見えなくなっていますが、広範囲な海洋汚染が微生物に吸収され、将来どのような被害をもたらすかは、今はわかりません。それでも「安全宣言」が出され、危険な掘削は続きます。クリーンなエネルギーとして推進される原発の事故もまったく同じパターンです。(中野)
ゲスト
*ナオミ・クライン(Naomi Klein)数々の賞を受賞したジャーナリスト。『ブランドなんか、いらない』、The Shock Doctrine: The Rise of Disaster Capitalism『ショック・ドクトリン:火事場泥棒の資本主義』の著者
字幕:桜井まり子 サイト:丸山紀一朗 全体監修:中野真紀子
関連動画
・2011/03/09/1 ショック・ドクトリンにご注意! 組合つぶし法案と米国の火事場泥棒
・2011/03/09/2 ナオミ・クライン:支払う気のない入札で活動家が有罪に― ならば環境汚染企業は?
・2009/09/03/3 天然ガス掘削による地下水の汚染 - (15分)
トラックバックURL - http://democracynow.jp/trackback/4276
ご支援、ご協力のお願い
まるごと翻訳 ネット配信
動画タグ
99%
黒人
麻薬
食糧危機
食糧主権
食品産業
食
音楽
革命
非暴力不服従
非暴力
非営利放送局
電波の民主化
難民
雇用不安
開発
銃規制
銀行
金融規制
金融救済措置
金融危機
金融
都市開発
都市の軍事化
遺伝子組み換え
選挙不正
選挙
通貨
途上国
農業
軍隊
軍事産業
軍事支援
軍事予算
越境
資源戦争
資源
資本主義
貧困
財政緊縮
財政破綻
財政危機
議会
議事妨害
警察
警備
諜報
言論の自由
解放の神学
規制緩和
西サハラ
被曝
著者
著作権
自由貿易
自然災害
緑の雇用
緊縮財政
経済封鎖
経済危機
経済制裁
組合つぶし
納税拒否
精神医学
米軍基地
米軍
米帝国
米国
空爆
移民
租税回避
秘密戦争
科学者
福島
石油企業
石油
知的財産権
監視社会
監視国家
監視
盗聴
白人男性
白人
畜産
環境破壊
環境汚染
環境
独立運動
独占
特別拘置引渡し
無人機
無人兵器
災害
温暖化
治安
油田開発
汚染
水質汚濁
水
気候格差
気候変動世界民衆会議
気候変動
気候債務
民衆蜂起
民営化
民主化
民主党
民主主義
殖民地支配
死刑
歴史
武器輸出
検閲
森林保護
核軍縮
核兵器
核
東日本大震災
東アジア
朝鮮戦争
朝鮮
書籍
暗殺
映画
日本
新自由主義
新聞
文明論
文化
教育
放射能汚染
放射能
排出権取引
拷問
抵抗運動
抗議行動
戦時性暴力
戦争犯罪
戦争の民営化
戦争
情報開示
性暴力
思想統制
思想
帰還兵
左派政権
工場占拠
島国
尋問手法
学生運動
学生字幕翻訳コンテスト
学生ローン
奴隷
女性
大統領選挙
大統領候補者討論会
大学
多国籍企業
報道
地球が燃えている
土地争奪
国連気候変動会議
国家債務
国境
商品先物取引
司法
右翼
反戦
原発ルネサンス
原理主義
原子力発電
占領
南北
南アフリカ
南アジア
医薬品
医療実験
医療保険制度改革
医療
北朝鮮
動物愛護
労働運動
労働
刑務所
分離壁
冬の兵士
冤罪
再生可能エネルギー
内部告発
共和党
公民権運動
公民権
党大会
先住民
債務
傭兵
偏向報道
個人情報
作家
住宅差押さえ
企業犯罪
企業の人権
企業と社会
人道援助
人道介入
人種
人権
二大政党
中東和平
中東
中国
中南米
中南米
不服従
一国家解決
ローラ・カールセン
ローラ・ポイトラス
ロリ・ウォラック
ロシア
ルワンダ
ルゴ
リビア
ランダル・ロビンソン
ラファエル・コレア
ラティーノ
ラジ・パテル
ラシード・ハーリーディ
ラウル・カストロ
ライトライブリフッド賞
ヨーロッパ
ユーロ
モード・バーロウ
モーゲージ債
モンサント
モルディブ
モラレス
メディア改革
メディアの集中
メディア
メキシコ
メアリー・ロビンソン
ムミア
ムジャヒディン
ミシガン
ミシェル・アレグザンダー
マードック
マルコム
マリーナ・シトリン
マフムード・マムダニ
マニュエル・セラヤ
マット・タイビ
マイノリティ
マイケル・ラトナー
マイケル・ムーア
マイケル・ハドソン
マイケル・ポーラン
ポール・クルーグマン
ボリビア
ボリバル
ボトル水
ボイコット
ホンジュラス
ホワイトスペース
ホロコースト
ペンタゴン文書
ペレス・モリーナ
ペレス・モリーナ
ベネズエラ
ベトナム
プエルトリコ
ブラッドリー・マニング
ブラックムスリム
ブラックウォーター
ブラジル
ブッシュ政権
ブッシュ
フリープレス
フリント水道汚染
フランス
フェミニズム
フィリップ・サンズ
ファシズム
ビンラディン
ビル・マッキベン
ヒロシマ
パンサー
パレスチナ
パラグアイ
パトリック・コウバーン
パキスタン
パイプライン
バーニー・サンダース
バンダナ・シバ
バングラディシュ
バルタサール・ガルソン
ハワード・ジン
ハリケーン
ハマス
ハゲタカ・ファンド
ハクティビズム
ハイチ
ノーム・チョムスキー
ノーム・チョムスキー
ノーマン・フィンケルスタイン
ネットの中立性
ニル・ローゼン
ニカラグア
ナショナリズム
ナオミ・クライン
ナオミ・クライン
ドナルド・トランプ
ドイツ
トーマス・ヤング
トランプ政権
トランプ
データマイニング
デモ
デジタル化
デイブ・ザイリン
デイビッド・グレイバー
ディエゴガルシア
テロリズム
テロとの戦争
ティム・デクリストファー
ティム・ショロック
チリ
チュニジア
チャルマーズ・ジョンソン
チェ・ゲバラ
ダーバン
ダルフール
ダニエル・エルズバーグ
タリバン
タリク・アリ
タックスヘイブン
ソマリア
スラボイ・ジジェク
スポーツ
スペイン
スパイ防止法
ストラトフォー
ストライキ
スティーブン・コーエン
スティーブン・キンザー
スタンディングロック
ジョン・ピルジャー
ジョン・レノン
ジョン・パーキンス
ジョセフ・スティグリッツ
ジョセフ・スティグリッツ
ジュリアン・アサンジ
ジュリアン・アサンジ
ジャーナリズム
ジェンダー
ジェレミー・スケイヒル
ジェレミー・スケイヒル
ジェレミー・コービン
ジェノサイド
ジェイソン・スタンリー
シリア
ショックドクトリン
シカゴ学派
シカゴ
シアトル
サラ・ペイリン
サミット
サパティスタ
サウジアラビア
ゴールドマン・サックス
コーポレートクラシー
コーネル・ウエスト
コンゴ
コロンビア
コムキャスト
コミュニティ
コソボ
ゲイ
ケネディ
グーグル
グローバリズム
グレン・グーリンウォルド
グレン・グリーンウォルド
グレッグ・グランディン
グレッグ・パラスト
グレタ・トゥーンベリ
グリーン・ニューディール
グアンタナモ
グアム
グアテマラ
クーデター
クロスオーナーシップ
クルーグマン
クリントン
クリス・ヘッジズ
クリス・ヘッジズ
クラウドファンディング
クドゥース
ギリシャ
ギグエコノミー
キング牧師
キルチネル
キリスト教右派
キューバ
ガーナ
ガザ支援船
ガザ
カーター
カリブ
カリフォルニア
カナダ
カダフィ
カストロ
オークランド
オリンピック
オリバー・ストーン
オバマ
オノ・ヨーコ
オキュパイ
オカシオコルテス
エルズバーグ
エルサレム
エルサルバドル
エネルギー
エドワード・スノーデン
エジプト
エクアドル
ウゴ・チャベス
ウゴ・チャベス
ウクライナ
ウィリアム・ハートゥング
ウィスコンシン
ウィキリークス
インドネシア
インド
インターネット
イラン
イラク戦争
イラク
イタリア
イスラム嫌悪
イスラム国
イスラム主義
イスラム
イスラエル
イギリス
イエメン
アーロン・シュワルツ
アーニー・ガンダーセン
アート
アーカイブ
アンドリュー・レブキン
アルンダティ・ロイ
アルゼンチン
アルジャジーラ
アルカイダ
アリ・アブニマー
アリゾナ
アリス・ウォーカー
アラブの春
アラブ
アメリカ先住民
アミラ・ハス
アマゾン
アブグレイブ
アフリカ
アフガニスタン
アパルトヘイト
アノニマス
アクティビズム
アイスランド
WTO
V-day
TPP
SOA
SNCC
OWS
NY
NSA
NATO
NAFTA
JSOC
GMO
GM
FTA
FCC
FBI
F2C
Express
EU
DPI
DN4Class
COP17
CIA
BP
AUMF
APA
ALEC
AIDS
1968
9.11