スターバックスがエチオピア・コーヒーの商標登録に合意 ―― エチオピアのコーヒー農家に朗報

2007/5/9(Wed)
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 エチオピア産のスペシャルティコーヒー豆は、アメリカでは1ポンド当たり25ドルで小売りされていますが、その同じ豆をエチオピアの貧しい農家は1ポンド当たり1ドル以下で売っています。エチオピア政府は、流通市場を管理し価格を引き上げるため、地元のコーヒー豆をアメリカでも商標登録しようとしていましたが、米コーヒーチェーン大手スターバックスがそれに反対。しかし、長い「紛争」の末、ついにスターバックスも商標権使用料支払い契約を締結することに合意しました。商標登録によるエチオピア農家の増収は、年間8800万ドルにのぼると推定されています。

 昨年8月、エチオピア政府はハラー(Harar)、シダモ(Sidamo)、イルガチェフ(Yirgacheffe)の3商標を登録したいと米国特許商標局に申請しました。これらの豆の流通を管理し、また小売価格に含まれる「商標権使用料」を生産者に支払うことによって、エチオピアの農民の増収を図るという仕組みを採用しようとしたのです。ところが、スターバックスは「商標をつけると法律上の複雑さが増し、企業が商標つきの豆を買わなくなり、農民を助けるどころかかえって状況を悪くする」という理由で、これに反対。スターバックスを含む全米コーヒー協会からの訴えを聞いた米国特許商標局もエチオピア政府の登録申請を却下。スターバックスは、商標出願を認めないことで、エチオピアの生産者に対して推定4700万ポンド(約8800万ドル、約105億円)の年間商標権使用料から免れていました。

 しかし、貧困撲滅をめざす国際団体オックスファムなどによる大々的なキャンペーンもあり、スターバックスはついに契約することに合意し、6月20日に契約締結に至りました。

 スターバックスに先立って商標権使用料支払い契約を締結したフェア・トレード・コーヒー豆焙煎業者のサイコン氏は、「値上がり分が確実に農家に入る制度にするようエチオピア政府と交渉を重ね、それが聞き入れられたのでサインした」とコメント。増収分の使い道を管理する委員会に、農家も参加できるようになったことを歓迎しています。

 一方、スターバックスに契約締結を求めるキャンペーンでさまざまなパフォーマンスを繰り広げたビリー牧師も、スターバックスの労働組合員としてエチオピア農家を訪れてみたサラ・ベンダーさんも、「スターバックスの野望はつぶさなければ」と発言。フェア・トレードを標榜する一方でコーヒー豆生産農家や店員に対してひどい扱いをしていることを、痛烈に批判しています。(古山)

*ワンドワッセン・メズレキア (Wondwossen Mezlekia) スターバックスをめぐる本件を詳細に追ってきた、エチオピアの活動家、アナリスト。シアトル在住。 Coffee_Politicspoorfarmer.blogspot.com というブログを運営しており、フェアトレード・プジェ・サウンド社の役員。シアトルのスタジオから出演。

*サラ・ベンダー (Sarah Bender) マンハッタンにあるスターバックスの従業員。スターバックス労働組合のオルガナイザーであり、「豆からカップへ 正義を求めるキャンペーン」のメンバー。今年の2月には、スターバックス用のコーヒー豆を栽培する農園労働者たちを訪れにエチオピアを訪れた。

*ディーン・サイコン (Dean Cycon) フェア・トレードのコーヒー豆焙煎業者。スターバックスと同様の登録商標使用料支払契約を、エチオピア政府と結んだ。マサチューセッツより電話にて出演。

*ビリー牧師 (Reverend Billy) 本名はビル・タレン。買い物の誘惑に打ち克って大量消費の悪の根を断ち切ることを勧めるために、ニューヨークの街角や小売店、そして「無買日」(post-Thanksgiving Buy Nothing Day)などの抗議運動に現れてはパフォーマンスを行っている。自らの組織を「無買教会」(Church of Stop Shopping)と称するビリー牧師は、「買い物をやめよう! もう2度と買うまい!」と歌うゴスペル聖歌隊を伴うことが多い。

Credits: 

字幕翻訳:川上奈緒子 
全体監修:古山葉子