グアテマラの元独裁者リオス・モントに歴史的判決下る

放送日: 
2013/5/13(月)
再生時間: 
31分

5月10日グアテマラの裁判所は元軍事独裁者エフライン・リオス・モントに対し、ジェノサイドと人道に対する罪で有罪、80年の刑を宣告しました。 中南米はもちろん世界中を見渡しても、元国家元首が自国の裁判所でジェノサイドの罪で裁かれるなんて初めて。しかも有罪判決が出たのは驚くべきことです。

リオス・モントは1982年に権力を掌握すると、米国のレーガン政権と密接な協力関係を結び、軍や民間自衛パトロール隊を動員して反体制派の撲滅に乗り出 しました。マヤ系先住民も攻撃の対象となり、村々を襲撃して大規模な虐殺を引き起こしました。グアテマラ内戦の死者や行方不明者は20万人と推定されます が、その多くがリオスモント政権の18カ月に集中しています。今回の有罪判決は、このうち1700人以上の先住民の虐殺についての責任を問うものです。

ここに来るまでの道のりには活動家の国際ネットワークの地道な努力がありました。とりわけ注目されるのは強い信念と並々ならぬ勇気を発揮した3人の女性(先住民活動家リゴベルタ・メンチュウ、検事総長クラウディア・パス・イ・パス、判事ヤスミン・バリオス)の行動です。なにしろ、この国では軍や特権的財閥に立てつく者はたちまち惨殺されてきた歴史があるのですから。

公判を担当したヤスミン・バリオス判事は防弾チョッキをつけて法廷に通い、文字通り命がけで有罪判決を読み上げました。 この肝のすわり方は尋常一様ではありません。30年を超える内戦でおびただしい犠牲者を出したグアテマラの恐怖政治の過去に立ち向かうには、こういう気迫 が必要なのでしょう。この力が、人権の歴史に大きな一歩を刻む判決をもたらしました。

ジェノサイド裁判の続行を困難にする要因の一つが、2011年の大統領選挙でのオットー・ペレス・モリーナ将軍の当選です。新大統領はリオス・モント独裁時代に虐殺を実行した人物であり、裁判が進めばいずれ我が身にも追及がおよぶ立場です。

米国人ジャーナリストのアラン・ネアンは1982年グアテマラを取材し、虐殺が行われた先住民の村で指揮をしていたペレス・モリーナその人と話を交わしています。このときの映像を携えたネアンのグアテマラ法廷での証言は、直前になって差し止められました。

その一週間後に出たリオス・モントの有罪判決ですが、案の定、大統領側による横やりで、数日後には憲法裁判所によって判決が無効とされてしまいました。それでも権力の中枢にいた人々がジェノサイドの罪で裁かれるという画期的な前例は作られました。10年前には考えられなかった展開です。 いまも護衛をつけられているバリオス判事も、これで幕引きとは考えていません。(中野真紀子)

ゲスト

*アラン・ネアン(Allan Nairn): 1980年代前半にグアテマラで起きたマヤ系住民の集団虐殺、1999年に東ティモールで起きたインドネシア軍による集団虐殺(サンタクルス虐殺)の報道で知られる調査報道記者。1982年当時、軍指揮官だったペレス・モリーナ現グアテマラ大統領にインタビューしている。

字幕翻訳:川上奈緒子 校正:桜井まり子

Share this
トラックバックURL - http://democracynow.jp/trackback/7047