チョコレートのほろ苦い経済 児童労働廃止はかけ声倒れ

24分
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放送日: 
2008/2/14(木)

コートジボワールの貧しい農民を犠牲にして繁栄するグローバルなカカオ業界

7年前、カカオ農園での過酷な児童労働廃止への努力を誓ったカカオ/チョコレート業界。けれども世界のカカオの4割を産する最大の生産国コートジボワールでは子供たちがいまも農園で働き、危険な作業に従事しています。児童労働を余儀なくする大きな原因は、貧困。圧倒的なパワーを裏づけに農民を支配し、カカオの積出港で買取り価格を抑えに抑えて巨利を得る穀物メジャー。この構造的問題を解決する取り組みが不足しています。前半のゲストはコートジボワールで現地取材しフォーチュン誌に「チョコレートのほろ苦い経済」という記事を寄稿したジャーナリストのクリスチャン・パレンティと「世界カカオ基金」のウィリアム・ガイトン理事長。後半では、フェアトレード・チョコレート「スィオ・チョコレート」の創立者兼CEOのジョー・ウィニーが、第三世界での体験をもとにチョコレート・ビジネスのもうひとつのあり方を話します。

コートジボワールのカカオ生産の歴史には、アフリカの現代史が浮き彫りにされています。1960年にフランスから独立したコートジボワール(以前は、象牙海岸と呼ばれていました)。独立時からなんと33年間も終生、大統領として独裁政権を続けたフェリックス・ウフェボワニのもとカカオ産業は順調に発展し、世界生産の4割を占めるにいたりました。政府はカカオの安定化基金を設立し、国際価格が下がったときには税率を上げて輸出量を下げるなどの操作をして輸出価格の安定を図り、農民の絶大な支持を得ました。1980年までにはコートジボワールの熱帯雨林地帯では大半の農家がカカオ栽培を始め、現在でもカカオは同国の輸出の35%を占めます。

けれども1980年代半ばにカカオは世界的な生産過剰に陥りました。農民から安定価格で買い入れを続けたコートジボワール政府は膨大な量の国内在庫を抱え、国際価格の値上がりを待ちましたが、穀物メジャーを擁し十分な在庫を持つ欧米諸国との我慢比べに破れ、値くずれした国際市場価格でカカオを放出し、大損害を生じました。
1990年代になると、貿易赤字に陥ったコートジボワール政府に、IMFや世界銀行が民営化圧力をかけます。カカオ安定化基金の不透明な運営が大統領や政府役人に食い物にされていたこともまた事実で、安定化基金は1999年にアメリカのチョコレート資本の圧力のもと廃止されました。こうして農民の暮らしを無視し国際的な穀物メジャーが自在に買取り価格を指定できる体制が生まれたのです。

2002年から2004年にコートジボワールに内戦が起こると最大の収入源であるカカオは政府側だけでなく反乱軍側でもカカオの収益を紛争の財源とされ、さらに両者側とも有力者が売り上げの上前をはねて私服を肥やしたといわれています。

チョコレートの苦い経済が米国議会ではじめて取り上げられたのは2001年のこと。他国から誘拐されて売られ奴隷としてカカオ農園で強制的に働かされている子供たちについての報道をきっかけに、トム・はーキン上院議員とエリオット・エンゲル下院議員が主導者となり、「ハーキン・エンゲル議定書」が「最悪の形態の児童労働」を廃止する目的で起草されチョコレート製造業者協会と世界カカオ基金代表が署名しました。

国際熱帯農業研究所が西アフリカで実施した調査(世界カカオ基金、米国国際開発庁及び労働省、ILO、各国政府の協力のもとで実施され、結果は2002年に発表)によると、調査当時コートジボワールだけで約13万人の子供がカカオ農園で従事していました。その多くは、零細な家族経営の農園で家族の手伝いをする子供たちでしたが、奴隷の可能性もある「家族や親戚ではない子供」も1万2千人報告されました。家族経営の家の子供(6歳から17歳)のうち3分の1は一度も学校に行ったことがなく、多くの子供たちが、農薬の撒布やナタや電気のこぎりを使った危険な作業にも携わっていました。

「ハーキン・エンゲル議定書」は目標達成期日を2005年としましたが、実現せず、期限は2008年7月に延長されました。けれども、クリスチャン・パレンティの現地レポートに見るように業界に、当を得た真剣な取り組みが不足しており、目標達成のめどがたっていないのは明らかなようです。ちなみに「世界カカオ基金」にはマーズ、ハーシー、ネスレなどのグローバル企業のほか、日本からも明治製菓と森永製菓が参加しています。また、日本では、フェアトレード・チョコレートを推進する人々のほか、児童労働を考える特定非営利活動法人「ACE」が、チョコレートと児童労働の問題について積極的な取り組みを行っています。

ゲスト

クリスチャン・パレンティ(Christian Parenti) 『ネイション』誌の特派員。2008年2月4日の『フォーチュン』誌に寄稿したChocolate’s Bittersweet Economy(『チョコレートのほろ苦い経済』)で、西アフリカでのカカオ生産者の労働環境に改善がみられないことを指摘した。

ウィリアム・ガイトン(William Guyton) 世界カカオ基金理事長

ジョー・ウィニー(Joe Whinney)スィオ・チョコレート社(Theo Chocolate)の創立者で創立者。スィオ・チョコレート社は、米国内で唯一の有機栽培のカカオ豆を供給しし、初めてフェアトレード認証のカカオ豆の生産を始めたことを誇ります。

字幕翻訳:大竹秀子 / 全体監修:中野真紀子

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