クライン&ルイスの映画「これがすべてを変える」 気候変動の最前線で闘う人々が切り開く未来

放送日: 
2015/10/2(金)
再生時間: 
30分

ベストセラー『ショック・ドクトリン』で知られるナオミ・クラインとアルジャジーラの番組フォールトラインの元司会者アビ・ルイスが気候変動の課題に取り組む新作ドキュメンタリー映画『これがすべてを変える』を制作しました。クラインの同名著作の執筆と同時進行で制作された本作品はルイスが監督し、4年の歳月を掛けて5大陸9カ国を巡り、世界中に広がる気候正義運動を伝えています。映画の中で、「気候変動は危機ではなく、よりよい世界を作るチャンスだとしたら?」と問いかけるクラインとルイスに話を聞きます。

映画の予告編の紹介で意表を突くのは気候変動の科学的根拠を否定するハートランド研究所の会議で、共和党の元秘書マーク・モレノが壇上で「多くの人は地球温暖化に危機感を抱いていない」と熱弁を振るい、満足気な表情を見せる参加者たちを映し出した映像です。気候変動の人為的要因に科学的合意はないとする立場を取る同研究所は、石油・ガス業界からの多額の寄付が指摘されています。

化石燃料の採掘や精製は環境汚染を免れません。資本主義の発展のためには、汚染の犠牲となる地域があるのはやむを得ないと考える米政府は、これらの地域を「犠牲区域」と呼んでいました。スモッグに覆われた上空も「犠牲区域」です。先進国の人々はスモッグが消えた都市部の上空を見上げて大気の自浄作用で公害問題を打開したかのように安心していますが、実際は「犠牲区域」の場所が移動しただけです。中国には1年の半分以上がスモッグに覆われている都市もあります。先進国に住む人々は、中国やインドの大気汚染を「別の国で起きていることだから仕方がない」と一蹴しますが、これらの国が先進国の「犠牲区域」になっていることも、実際には自らの安全も脅かされつつあることにも気づいていません。今や「犠牲区域」は私たち人間の支配下にはありません。気候変動に起因する紛争や難民問題、ハリケーンの来襲という形で、世界中どこでも「犠牲区域」になり得るのです。

北半球の先進国に住む世界人口のわずか20%が、世界のCO2の70%を排出しています。気候変動の原因は欲深く近視眼な人間の本質にあると言われますが、もしそれが事実であれば、温暖化の回避に望みはありません。クラインはここに疑問を投げかけます。400年前に世界初の株式会社である東インド会社が設立されると、資本主義を構成する資本家と労働者の関係が生まれ、経済の発展が実現しました。気候変動を招いたのは、人間の本質ではなく、産業の永続的な成長と利益の拡大を大前提とした現代の経済システムではないか、とクラインは問います。クラインは、環境問題に直面した地域の人々が立ち上がり、地球温暖化を防ぐために最前線で活動する姿に、気候変動の原因は人間の本質ではないと気づいた、と言います。

11月6日、オバマ大統領は、「米経済に長期的な貢献をもたらさない」として、カナダのエネルギー企業トランスカナダが申請していた、カナダから米テキサス州に原油を運ぶ「キーストーンXLパイプライン」の建設計画を却下しました。トランスカナダは自社のHPで、原油を運ぶパイプライン建設後はその土地の土壌も植物も元の状態に戻すと謳っています。映画の中で、「そのような空論には騙されない」と先住民が声を上げていますが、オバマ大統領の発表は、建設に反対してきた地元の人々や環境団体が勝利を収めた形となりました。彼らの活動から「ブロケディア(blockadia)」という造語も生まれました。阻止(block)と理想郷(arcadia)の合成語で、政府や大企業による環境破壊を伴う計画に反対する人々が、身体を使って非常事態を阻止する活動場所を指しています。ブロケディアは国境を越えて広がり、変革を進める人々が支え合って大きな力になっています。

米国海洋大気庁は、1880年に開始した観測記録で、最高気温を記録した10カ月のうち9カ月は2005年以降に集中していて、2015年7月は観測史上最も暑い1カ月を記録したと発表しました。温暖化対策は急務であり、どのような主義主張を掲げようと、誰も逃れることはできないのです。私たち個人の行動による変革と経済システムの抜本的な構造改革が求められています。(山下仁美)

ゲスト

*ナオミ・クライン(Naomi Klein):ジャーナリスト、『ブランドなんか、いらない』『ショックドクトリン』などベストセラーの著者。最新作は『これが すべてを変える 資本主義と気候の対決』。同書にもとづくドキュメンタリー映画では、ナレーターを務めている。
*アビ・ルイス(Avi Lewis):映画『これが すべてを変える』の監督、プロデューサー。元アルジャジーラの番組フォールトラインの司会。

字幕翻訳:朝日カルチャーセンター横浜 字幕講座チーム:
東泉知佳・千野菜保子・仲山さくら・山下仁美・山田奈津美・山根明子
/校正:中野真紀子

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