スティーブン・キンザー(2)マーク・トウェインと反帝国主義連盟の忘れられた歴史

放送日: 
2018/3/12(月)
再生時間: 
13分

元NYタイムズ紙海外特派員スティーブン・キンザーへのインタビューのパート2は、反帝国主義連盟の忘れられた歴史の話です。20世紀への変わり目の時期に米国の領土拡張政策は岐路を迎えていました。北米大陸の制覇は完了し、カリブ海や太平洋のスペイン領に触手を伸ばし、米西戦争中にプエルトリコ、フィリピン、グアムなどを占領しました。このとき海外領土を持つ世界帝国へと発展するか、それとも拡大はここで打ち止めにして、北米大陸内部の支配を強固にすることに専念べきか、選択を迫られたのです。

海外への領土拡張に反対する勢力の中心となったのが反帝国主義連盟でした。中心メンバーにはアンドリュー・カーネギーのような実業家やジェイン・アダムズ、サミュエル・ゴンパーズ、ブッカー・ワシントンなどの社会活動家、元大統領のグローバー・クリーブランドなど幅広い著名人が名を連ねていました。無数の集会を開き、リーフレットを撒き、ワシントン政界でロビー活動を行い、大きな影響力を持ちました。スペイン領の割譲を盛り込んだパリ講和条約の批准は上院で30日以上も激烈な討議が闘わされ、他国への干渉の是非を問う今日まで続く全ての論点が出尽くした、とキンザーは言います。

反帝国主義連盟でとりわけ雄弁で舌鋒するどく帝国主義を批判したのがマーク・トウェインでした。現在の彼のイメージとはかけ離れた戦闘的な発言に驚かされます。トウェインの伝記や作品集からは毒のある部分を取り除き、愛すべきユーモア作家に仕立てあげたことが端的に示すように、反帝国主義連盟の存在はその後の歴史の教本から綺麗に排除されてしまいました。

ウールジー元CIA長官のテレビ発言にあるように、米国による他国の選挙への干渉は現在も絶え間なく続いています。とはいえ、1970年代の上院チャーチ委員会による調査でCIAによる国内外の非合法活動が明るみに出て以来、CIAが露骨な内政干渉をすることは難しくなりました。そこでCIAの代わりに公然と他国への選挙干渉を行う機関として、レーガン政権が1983年に全米民主主義基金(NED)を創設しました。他国の民主化を支援するという名目で、年間1億7千万ドルを上回る資金が米国の国家予算から提供され、共和党系の国際共和研究所(IRI)、民主党系の全国民主国際研究所(NDI)などが仲介して関連組織に分配され、他国の野党や反体制運動などの支援に使われています。キンザーによれば、NEDの理事会には2014年のウクライナ政変で反体制デモを激励したビクトリア・ヌーランド国務次官補や、イラン・コントラ事件にかかわった外交官のエリオット・エイブラムズなどがいます。日本にも無関係な話ではないはずで、警戒が必要です。

このようにいまだに公然と他国への選挙干渉を繰り返す米国が、ロシアによる米国大統領選挙への干渉をヒステリックに非難してもぜんぜん説得力がありません。そもそもロシアがどんな干渉をしようが、米国の民主主義への脅威という点では国内機関のほうがずっとランクが上だとキンザーは指摘しています。(中野真紀子)

ゲスト

スティーブン・キンザー(Stephen Kinzer) :元ニューヨークタイムズ紙の海外特派員、現在はボストン・グローブ紙で国際問題のコラムを担当。『転覆~ハワイからイラクまで米国によるレジームチェンジの世紀』、『シャーの手下たち~米国による政権転覆と中東のテロの根源』、グアテマラのクーデターについての『苦い果実』など、著書多数。最新作『本当の旗~セオドア・ルーズベルト、マーク・トウェイン、米帝国の誕生』は最近ペーパーバック版が出版に

字幕翻訳:デモクラシー防衛同盟
千野菜保子・仲山さくら・水谷香恵・山下仁美・山田奈津美・岩川明子
全体監修:中野真紀子

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