地球温暖化を否定するエネルギー業界のPR作戦

2009/10/20(Tue)
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企業おちょくりの名人イエスメンがまたやりました。全米商工会議所を装い、気候変動法案への反対を取り下げ、CO2排出への課税を支持するとワシントンDCの記者クラブで発表したのです。排出規制に猛反対してきた世界最大のロビー団体が、悔い改めたのか?「でっち上げの宣伝行為だ」と本物の商工会議所は憮然として会見内容を否定しましたが、気候変動法案をめぐる「やらせ」にはもっと派手な前例があります。
米国最大の石油ロビー「米国石油協会」(API)が2008年夏、業界に総動員をかけて草の根運動を装った気候対策反対集会を全国各地で開き、一般市民の間に地球温暖化への取り組みへの反対が広がっているとの印象捜査をしていたことが発覚しました。『気候問題隠し 地球温暖化を否定する聖戦』の著者ジェイムズ・ホッガンは、エネルギー業界が、人間活動が引き起こす気候変動は科学的に証明されていない疑問の残る概念だという印象を世間にふりまくため、巨額の宣伝費を投じてあの手この手で「科学者との戦い」を繰り広げていると言います。

彼らの戦術は、いんちき科学者集団を雇って、議論のないところに議論をつくり出すことです。気候変動を否定する代わりに、「疑問が残る」と言うことにしたのです。疑問のないところに疑問をでっちあげ、学会ではなくマスコミの場で金にあかせて何度も討論を繰り返し、まだ十分に解明されていないとの印象を人々に植えつけます。まだ不確実なことに、性急な対策はいらないと言うためです。この手法の走りがタバコ企業だったというのは、まさに、さもありなんという感じ。(中野)

*ジェイムズ・ホッガン(James Hoggan)
Climate Cover-Up: The Crusade to Deny Global Warming (『気候の隠蔽:地球温暖化を否定する聖戦』)の著者。PR会社Hoggan & Associates の社長。デイビッド・スズキ財団の会長、アル・ゴアの気候プロジェクトのカナダ支部長。
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字幕翻訳:桜井まり子/校正・全体監修:中野真紀子・付天斉