グリーン・ニューディール 上院で否決 広がる運動を阻止する悪あがき

2019/3/28(Thu)
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民主党のオカシオコルテス下院委員とマーキー上院議員が提出したグリーン・ニューディール(GND)決議案が3月26日、上院で否決されました。グリーン・ニューディールはオバマ以来の民主党の目玉政策の一つで、政府が再生可能エネルギーに大胆な投資をすることで多数の緑の雇用(グリーン・ジョブ)を作り出し、米国経済を2030年までにCO2排出ゼロに変えることを目指します。しかし、共和党が強引に採決に持ち込んだ結果、民主党議員はほとんどが棄権(賛否を示さない「出席」投票)、4名は共和党議員と共に反対票を投じました。グリーン・ニューディールは挫折したのでしょうか?

グリーン・ニューディールの政策策定担当者リアナ・ガンライトによれば、この採決は共和党がGND決議案の勢いを恐れて仕掛けたもので、民主党内に反対の声があることを際立たせて早めに潰そうとしたものでした。そこで民主党は、決議案を温存し、今後の進化を可能にするために、棄権投票という形をとったのです。民主党内の反対は、具体的な政策がそろっていないこと。従って政策実行のコストが不透明なためです。

コストについては既存の研究があり、ロバート・ポリン教授(マサチューセッツ大学アマースト校経済学)はグリーン雇用推進による経済効果を計算しゼロ炭素社会における経済成長モデルを追求しています。またロッキーマウンテン研究所は抜本的な脱炭素化を行えば米国経済は2.5倍も成長し、5兆ドルのコストが節約できると見積もっています。一方、気候対策をしなかった場合の災害コストは巨額なものになります。具体的な政策が固まれば、コストの議論も深まるでしょう。

ガンライトが政策面で重視しているのが、人種による富の格差の問題とグリーン・ニューディール政策のリンクです。気候変動による被害が一部のコミュニティに集中しており、しかも気候変動の原因を作ったのは彼らではないことから「気候正義」という考えが生まれています。この不正をただすためにも、再エネ経済への転換に際して、化石燃料時代に踏み台にされてきた人々がグリーン経済で再び犠牲にならないような配慮が必要です。かつて第二次世界大戦やニューディール政策で雇用が創出されたときには一部の人々が恩恵から除外され、その影響が数世代も残りましたが、今回はそうした過去の経験から学ぶ必要があると彼女は言います。

*リアナ・ガンライト(Rhiana Gunn-Wright):グリーン・ニューディールの主要政策策定者の一人。NPO「ニューコンセンサス」の政策主任。

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字幕翻訳: 目白翻訳チーム(松尾真奈美、宮崎晶子、岡田奈知、佐藤和子、下崎哲也、田辺希久子) 校正:中野真紀子