マイケル・ポーランの新提言「広告で見た食品は買うな」

2009/5/14(Thu)
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ゲストのマイケル・ポーラン氏は食に関する著作の多いジャーナリスト。ついに世界流行宣言が出された新型インフルエンザの起源に、自然から完全に切り離された米国式の工業型畜産があることから語り始め、農薬大手企業モンサント社が振りまく遺伝子組換え作物が生産性を高めるという神話の嘘など、大手マスコミが沈黙して触れようとしない問題を掘り起します。

ポーラン氏は最新の著書『食を守れ─食べる人宣言』(※注)で、食品産業に支配される偽科学「栄養学」の虚飾の仮面を剥ぎ取り、「健康に良い」とされる栄養素に着目するあまり、実は栄養価の低い加工食品を買い込まされている消費者に警鐘を鳴らしました。ところが、したたかな食品産業はポーラン氏の提言を逆手に取り、「5種類の原料でできたアイスクリーム」や「コーンシロップを使わない清涼飲料」など、さらに「健康に良い」商品をつぎつぎに開発しています。

これに対するポーラン氏の回答は「広告で見た食品は買うな」。米国国内最大の問題とされる医療保険問題、世界共通の脅威である地球温暖化問題と云う、二つの重要課題の背景にあるのは現代の工業化された食のシステムそのものだと喝破します。そういえば「豚インフルエンザ」は「新型インフルエンザ」と言い換えられましたが、その背後にも批判を恐れる食品産業への配慮があったのではと思うのは、果して勘繰り過ぎでしょうか。(斉木)

※これを翻訳した後で、In Defense of Food: An Eater’s Manifestoの邦訳が出ました。『ヘルシーな加工食品はかなりヤバい―本当に安全なのは「自然のままの食品」だ』(高井 由紀子訳、青志社)というタイトルです。この字幕では、『食を守れ』となっていますので、ご注意ください。

*マイケル・ポーラン(Michael Pollan)
食の問題に関して、米国を代表する作家兼批評家の一人。『欲望の植物誌』、The Omnivore’s Dilemma(『雑食動物のジレンマ』)、『ヘルシーな加工食品はかなりヤバい―本当に安全なのは「自然のままの食品」だ』など食に関する多くの著作を出している。カリフォルニア大学バークレー校教授で『ニューヨーク・タイムズ・マガジン』の常連寄稿者

Credits: 

字幕翻訳:小椋優子/校正:斉木裕明
全体監修:中野真紀子・付天斉