排出権取引

ベストセラー『ショックドクトリン』から7年、ナオミ・クラインの待望の新著は気候変動の問題を支配イデオロギーの側面からとらえます。地球温暖化の真偽をめぐる論争は、純粋に科学的な関心に基づくものと思ってはいけません。少なくとも米国では、懐疑派は共和党、肯定派は民主党と支持政党によってきれいに分かれており、本質はきわめて政治的かつ思想的な対立です。
いくつかの主要環境保護団体が、身内から告発されています。地球を守るという使命を標榜しながら、その使命を裏切る不道徳な姿勢をとっているという非難です。ネイション誌の最新号で、英国人ジャーナリスト、ヨハン・ハリは次のように記しています。「我々が人類史上最大の環境危機に直面しているというのに、率先して危機回避に取り組むべき環境団体の多くが、世界一の環境汚染企業からせっせと金をかき集め、その見返りに科学的根拠に基づいた環境保護の主張を葬り去 ろうとしている。温暖化懐疑論者たちが大げさに吹聴するでっち上げの気候問題スキャンダルが渦巻いているが、こちらこそが本物のクライメットゲート (気候データ改竄疑惑)だ」。
米環境保護庁(EPA)の二人のベテラン弁護士が、連邦議会で審議中の気候変動法案を批判するビデオをYouTubeに公開し、同調から削除ないし変更するように圧力をかけられました。このビデオは、排出権取引のCO2削減効果に疑問をはさみ、致命的な欠陥があると警告しています。特に、排出したガスの埋め合わせに別の場所での排出を削減する「オフセット」(相殺)の市場には、根本的な欠陥があると指摘します。(13分)
地球温暖化への対策が生み出した新手のビジネスに注目しましょう。温室効果ガスの排出削減の決め手とされるのは、「排出量取引」(キャップ・アンド・トレード)制度です。これは国や企業ごとに排出量の上限(キャップ)を定め、その枠を超えて排出してしまった分は、排出枠が余っている国や企業から権利を買い取る(トレード)仕組みです。ここから、CO2を吸収する森林がカーボン・ビジネスの鍵となる商品になりました。世界の温暖化ガス排出の大要因である伐採を防ぎ、森林を保護すれば、他のところで起きたCO2排出を相殺できるからです。企業は削減目標の未達分を、どこかよその森林の保護によって相殺することができます。でもその実態はどんなもので、森林地帯に住む人びとの生活にどんな影響をあたえているのでしょう?(14分)