近代オリンピック秘史と祭りをダシにする惨事便乗型資本主義

放送日: 
2016/6/1(水)
再生時間: 
20分

いよいよリオ五輪の開幕です。『悪魔と踊るブラジル』の著者デイブ・サイリンと『パワー・ゲーム オリンピックの政治史』の著者ジュールズ・ボイコフ氏をゲストに迎え、オリンピックの歴史にまつわる興味深い事実や近年の変質について話します。近代オリンピックの父クーベルタンは「愛と平和と環境保護」という理念を掲げましたが、その一方で巧妙に仕組まれたショーであり、排除のゲームであるという側面も浮かび上がります。

歴史を振り返れば、クーベルタン男爵のオリンピック提唱には、対独戦争で敗れたフランスの若者を鼓舞する狙いがありました。それはナチスのベルリン・オリンピックで深化され、ナショナリズムを煽った演出が人を陶酔させました。このときに導入された聖火リレーや軍隊式の入場行進などの演出は、現在も引き継がれています。

一方、昔から被抑圧者の抗議の場であったこと、差別を受けていた女性と労働者が女子大会や労働者大会を開催していたこと、住民の反対で返上された例など、オリンピックの様々なエピソードも紹介されます。こうした歴史的変遷を踏まえ、オリンピックが巨大すぎて変えられないというイメージは誤りであると指摘します。

オリンピックの過度の商業化の問題に絡め、ボイコフは「祝典便乗型資本主義」という自説を述べます。この概念は、ナオミ・クラインのショックドクトリン(惨事便乗型資本主義)を踏まえたもので、政府と私企業が、「惨事」でなく巨大イベントである「祝典」に便乗して市場原理主義を一気に推し進める手法を指します。五輪は経済効果があるとよく言われますが、儲かるのは一部の巨大企業にすぎません。一部の私企業が莫大な公金を使って利益を得る仕組みです。大会に向けた巧みなマーケティングや宣伝で雰囲気が盛り上げられ、経済の起爆剤として、人々は心躍る祭典に夢を託すでしょう。しかし夢が覚めると莫大な借金の返済と緊縮財政が待っているのです。ブラジルではその夢はすでに悪夢と化しつつあります。

もう一つ大事なポイントは、オリンピックがもたらす都市の軍事化です。特に伸びているのがセキュリティ対策です。現在、テロ対策として世界中でセキュリティ強化が叫ばれていますが、大会運営にどのような企業が参加しているかを確認する必要があります。ザイリン氏は、イスラエルの二大武器製造会社がリオ大会のセキュリティを担当していると言います。セキュリティ産業にとってオリンピックは荒稼ぎのできる巨大なビジネスチャンスであり、武器見本市なのだと。東京でもドローンが大活躍することでしょう。

司会のエイミー・グッドマンは、バンクーバー五輪の際に検問を受けた自身のエピソードを紹介すると共に、五輪に反対する意見や活動への行き過ぎた当局の規制や監視行動を問題視します。批判の声を封殺し、弱者には家屋の強制撤去や立ち退きが行われ、政府に都合の良い環境が整備される。オリンピックでは、煽るマーケティングとテロ対策という名目の治安強化が人心掌握の両輪として機能し、国民総意の下での監視社会が作り上げられるのです。(山根明子)

ゲスト

・デイブ・ザイリン(Dave Zirin):雑誌『ネイション』のスポーツ欄編集主任。Brazil’s Dance with the Devil: The World Cup, the Olympics, and the Fight for Democracy(『悪魔と踊るブラジル:ワールドカップ、オリンピックと民主主義への闘い』)の著者

・ジュールズ・ボイコフ(Jules Boykoff):Power Games: A Political History of the Olympics(『パワー・ゲーム オリンピックの政治史』)の著者。オレゴン州のパシフィック大学の政治学教授

字幕翻訳:デモクラシー防衛同盟
千野菜保子・仲山さくら・水谷香恵・山下仁美・山田奈津美・山根明子
/全体監修:中野真紀子

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