一国家それとも二国家? パレスチナ=イスラエルの未来に向けた新しい展望 後編

2006/11/28(Tue)
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9
14分

 国際的な人権活動で評価が高い元アメリカ大統領ジミー・カーターは、1978年の中東和平合意をとりもって以来、イスラエル=パレスチナ問題にずっと関心を注いできました。2006年の秋、カーターはイスラエルの占領政策を「アパルトヘイト」という言葉を用いて批判する本を発表し、大きな論争を巻き起こしました。CNNテレビの「ラリー・キング・ライブ」にも出演して、占領の現状を率直に批判するとともに、この問題がいっさい報じられず、議論もされないことが、アメリカの大きな問題だと指摘しました。このタブーを破り、自由に議論をはじめようというのが自分の意図であり、イスラエルを非難することではないと語っています。こんな発言が、封殺されることなく堂々とテレビに登場したのは、元大統領だからこそ。

とはいえ、カーターをはじめ国際社会の和平努力が前提としているのは、あくまでも占領地の独立によるパレスチナとイスラエルの分離共存です。現在のイスラエルの拡大政策が非難されるのは、それがパレスチナ国家の成立を阻んでいるからです。 しかし、半世紀以上も前に国連が提示したパレスチナ分割案は、40年も続いたイスラエルの軍事占領によって現地の状況が決定的に変化した現在、どれほど実現可能なのでしょう。

現実の状況を踏まえた上で、パレスチナ国家を独立させる以外の、別の形の未来を考え始めるときがきているのではないか。ユダヤ人とパレスチナ人が一つの国の中で同等の権利をもって共存する可能性を、「一国家」解決と呼んで追求する人たちが少数ながら出てきています。このトピックスでは、アメリカで発言する二人の代表的なパレスチナ人が、この新しい考え方をめぐって意見を述べます。(中野)

ラシード・ハーリーディー (Rashid Khalidi) コロンビア大学の中東研究所所長、歴史学者。新著The Iron Cage: The Story of the Palestinian Struggle for Statehood(『鉄の檻  国家をめざすパレスチナ人の闘いの歴史』)で、パレスチナ国家が誕生しなかったのは何故かを論じています。

アリー・アブニマー (Ali Abunimah) エレクトリック・インティファーダ(パレスチナの抵抗運動サイト)の創設者の一人。 新しい展望を大胆に提唱したOne Country: A Bold Proposal to End the Israeli-Palestinian Impasse (『一国家 イスラエル=パレスチナ紛争の膠着打開のための大胆な提案』)という本を出しました。

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字幕翻訳・全体監修 中野真紀子