パイプラインの政治学 「オイルロード」と民主主義

2013/10/8(Tue)
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欧州委員会が発表した2014年の報告書によると、EU27加盟国が2006-2011年に消費した天然ガスの約6割、原油の約8割が 輸入に依存していました。EUが輸入する原油ガスの3割以上がロシアからだと言われます。このような依存体質の改善策として推進されたのが輸送の多角化でした。石油メジャーBPの年次報告では、欧州と資源国をむすぶ鉄道、トラック、タンカー、パイプラインなどの供給ネットワーク が示されています。アゼルバイジャンからトルコを経由して、欧州に原油を輸送するBTCパイプラインもそのひとつです。

ジェイムズ・マリオットによると、ロシアを迂回するパイプライン・ルートを主導したのは米国務省でした。コーカサス地方におけるパイプライン建設は、ロシアの影響力の拡大を警戒する沿岸諸国と欧米の利害が一致した政治戦略だとマリオットは言います。各国の利害関係は、国民生活にも重大な影響を与えます。パイプラインへの攻撃を防ぐために生産国に近い地域は軍事化が進みます。マリオットはこれを「軍事回廊」と呼びました。

2014年のウクライナ危機およびロシアのクリミア編入で、資源パイプラインの重要性はますます高まっています。英国のヘーグ外相 はさっそく、トルコとアゼルバイジャンの重要性を強調するコメントを出しました。

安全保障は本来、関係国と良好な外交関係を構築することで達せられるべきです。そのためには、カスピ海周辺地域から欧州までのパイプライン建設を進めてきた欧米が、ロシアにはどう映ってきたのかという視点も必要だろうと思います。(桜井まり子)

☆いろんなトピックスが入っています。下記を目安にしてください。

「カーボン民主主義」について   22分ぐらいから
エジプトの反革命と石油開発    26分ぐらいから
北極海油田開発とグリーンピースの逮捕   37分ぐらいから

ブログでも取り上げました → 「カーボン・デモクラシー」エネルギー供給体制が民主主義の姿を決める

*ジェイムズ・マリオット(James Marriott):ロンドンを拠点とする環境団体「プラットフォーム」の設立者で The Oil Road: Journeys from the Caspian Sea to the City of London (『石油の道:カスピ海からロンドン金融街まで』 )著者。

*アナ・ガルキナ(Anna Galkina):ロンドンを拠点とする環境団体「プラットフォーム」で調査分析を担当。

*ティモシー・ミッチェル(Timothy Mitchell):英国生まれの歴史学者。コロンビア大学中東・南アジア・アフリカ研究学科教授。 Carbon Democracy: Political Power in the Age of Oil (『炭素民主主義:石油時代の政治権力』)著者。

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字幕翻訳:阿野貴史 / 校正:桜井まり子/ 全体監修:中野真紀子