「ファシズムは、こう機能する」ジェイソン・スタンリー(2)ファシズムには強いパパがいる

2018/10/2(Tue)
Video No.: 
9
20分

世界的なファシズムの傾向に警鐘を鳴らすジェイソン・スタンリー教授の新著のインタビューの続きです(最後の10分は省略しました)。前半ではファシズムの政治手法の特徴として「10の柱」を列挙しましたが、後半ではそれぞれを具体的な事例に結びつけて説明し、それらが互いに補完しながらファシズムのイデオロギーを支えていることを示します。事例として挙がっているのは主にトランプ政権下の米国の出来事ですが、日本でも思い当たるふしはたくさんあります。

1920年代後半から30年代前半にかけても世界的ファシズム運動が広がり、極端な国家主義を唱える政治家が台頭しました。当時ような反対勢力の投獄やジェノサイドが、現在の独裁政権で行なわれているわけではありませんが、典型的なファシズム話法やプロパガンダはそこら中に氾濫しています。複数政党制の原則を踏みにじり、党利党略に走って議会政治を踏みにじる政治家たちによって、実質的な一党支配体制がすでに出現しているとスタンリー教授は指摘します。

1920~1930年代と現在の世界を比較して、ファシズムを生み出した要素の類似性を指摘する声は少なくありません。特に、グローバリゼーションへの反発という視点は説得力があります。最初のグローバリゼーションは19世紀末から20世紀初頭にかけて出現し、1929年に始まる世界金融恐慌により前代未聞の経済荒廃をもたらしました。当時の世界的ファシズム運動は、それに対する反発だったとして、2度目のグローバリゼーションへの反発としての現在の超国家主義の台頭との類似性が指摘されています。

ファシズムの政治手法の具体例は番組を聞いていただければよいと思いますが、一応ここに「10の柱」を列挙しておきます。国民を「われわれとやつら」に分断し、権力を保持するための10の柱とは、1)神話的な過去、2)プロパガンダ、3)反知性主義、4)非現実性、5)ヒエラルキー、6)被害者意識、7)法と秩序、8)性的不安、9)ハートランド、10)公共の福祉や結束の解体です。(中野真紀子)

*ジェイソン・スタンリー(Jason Stanley):イェール大学哲学教授。新著How Fascism Works: The Politics of Us and Them(『ファシズムは、こう機能する~~われわれv.s.やつらの政治』)が出版されたばかり。前著はHow Propaganda Works(『プロパガンダはこう機能する』)。

Credits: 

字幕翻訳:デモクラシー防衛同盟(千野菜保子・仲山さくら・水谷香恵・山下仁美・山田奈津美・岩川明子)/ アオキなな
全体監修:中野真紀子