学生失踪

2012年メキシコ大統領に就任したエンリケ・ペニャニエト大統領は、ハンサムで華麗なイメージで欧米マスコミの寵児です。「メキシコを救う」政治家としてタイム誌の表紙を飾り、教育改革やエネルギー政策が絶賛されています。要するに新自由主義の性格であり、オバマ大統領とがっちり組んで多国籍企業の対外投資を保護する政策をメキシコで推進していることがマスコミ人気の秘訣のようです。しかし、ここへきて豪邸をめぐるスキャンダルが浮上し、学生失踪事件をめうる全国的な抗議行動が吹き荒れ、改革者のメッキも剥がれてきました。ローラ・カールセンによれば、メキシコ社会における暴力の拡大とまん延は、ペニャニエトが推進する新自由主義政策と表裏一体なのです。
学生43人の失踪事件と捜査当局の対応をめぐりメキシコ各地で抗議行動が起き、現体制への批判が高まっています。メキシコ南部のゲレロ州で2014年9月21日夜、教員養成学校の生徒が乗るバスがイグアラ市警察に襲撃され、6人が死亡、25人が負傷し、43人が行方不明となりました。アヨツィナパ師範学校は貧しい農村地帯の子弟から教員を育て地方の生活水準の向上を図るために設立された地方師範学校の一つですが、こうした地方の自助努力は連邦政府によって反体制運動の温床とみなされ、しばしば弾圧を受けてきました。この事件の捜査で70人以上が逮捕され、警察に襲撃を命じたとされるイグアラ市長も逮捕されましたが、捜査当局の説明には矛盾が目立ちます。7週間以上も経つのに学生たちの行方はわからず、挙句にヘスス・ムリリョ・カラム検事総長が、学生たちはコクラのごみ集積所で殺害され、死体は焼却されたという、またしてもいい加減な発表をしたことが、大規模な抗議行動につながりました。ゲレロ州では政府の建物に火がかけられ、主要道路がデモ隊により封鎖され、抗議行動はメキシコ各地に広がっています。現地で取材している独立ジャーナリストのジョン・ギブラーは、今回の学生失踪事件で露呈したのは、警察と麻薬ギャングの完全な融合だと指摘します。