奴隷とアイビーリーグ: 奴隷制度が支えた米名門大学の発展

放送日: 
2013/10/30(水)
再生時間: 
18分

今でこそアメリカの知と良識の府として尊敬を集めているアイビーリーグの名門大学ですが、創立期から19世紀半ばにいたるまで、アメリカの負の歴史にどっぷりと関わっていました。MITの米国史教授のクレイグ・スティーブン・ワイルダーの上梓までに10年をかけた労作、Ebony & Ivy: Race, Slavery, and the Troubled History of America’s Universities. (『エボニーとアイビー:人種、奴隷制、そしてアメリカの大学の問題ある歴史』)は、ハーバード、イェール、プリンストンを初めとする東部名門校が、奴隷貿易で財をなした実業家たちの富を財源とし、北米大陸はもちろん、西印度諸島のプランテーションで大もうけした人々の子供たちを学生としてリクルートし、大学としての基盤を築いていった歴史を跡づけます。実際、多くの大学で学長職に就いたのは、奴隷貿易商の息子や親族が多かったのです。ワイルダーはまた、キャンパスに奴隷がごく普通に存在する環境で始まったアイビーリーグの大学が、北部で奴隷制が撤廃され奴隷貿易商たちが汚い過去を葬り去った後にも、「人種の科学」という科学の名の下で人種差別を「合理化」し、社会の周縁に置かれ法的保護を受けにくい人々を実験台にした研究で勢力を延ばしたことも検証しています。書名のエボニー(黒檀)とは黒人をアイビーとはアイビーリーグを指します。1980年代にスティービー・ワンダーとポール・マッカートニーは『エボニーとアイボリー』というピアノの黒鍵と白鍵をイメージし、人種間のハーモニーを歌いました。でもワイルダーの本『エボニーとアイビー』のカバーには奴隷をつないだ鎖にアイビー(蔦)がからまったイメージが使われています。アイビーリーグ関係者にとっては目にしたくないイメージかもしれませんが、いくつかの大学では、隠されてきた歴史を自ら検証しようという活発な動きも起きています。ブルックリンのシングルマザーの子供として育ったワイルダー教授は、かつて奴隷であれキャンパスに黒人がいたこと、そして中には解放されて優れた学者になった人もいたことを知り、自分がそのような場で学ことの意義をあらためて痛感したとあるインタビューで語っていました。告発ではなく真実の「面白さ」がこの本の魅力になっているようです。(大竹秀子)

ゲスト

*クレイグ・スティーブン・ワイルダー(Craig Steven Wilder): MITのアメリカ史教授。最新著、Ebony & Ivy: Race, Slavery, and the Troubled History of America’s Universities. (『エボニーとアイビー:人種、奴隷制、そしてアメリカの大学の問題ある歴史』)で広く注目を集めた。

字幕翻訳:川上奈緒子/校正:大竹秀子

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