沖縄からグアム、ハワイへ 太平洋米軍基地の拡大に反対する国際的連帯の呼びかけ

2010/5/24(Mon)
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27分

普天間基地の移転先をめぐる騒動は、ついに鳩山首相の辞任へと発展しました。でも首相の辞任によって沖縄問題が解決したわけではなく、むしろ次期政権に引き継がれる大きな政治課題となります。なぜなら地元の合意がとりつけられないかぎり、新たな基地の建設は不可能だからです。「沖縄の痛み」に気がついたのなら、もはや一方的な負担の押しつけはできません。この問題に対する新たな視点が必要です。デモクラシー・ナウ!では、5月末の沖縄での大規模な反対行動にからめて、太平洋地域における米軍基地の展開と、それに対する民衆の反対運動をとりあげました。

米軍基地は沖縄だけの問題ではありません。日本から出て行け、といっても、行った先では同じ問題が待ち受けています。移転先となるグアムでは、米軍関係者の流入でピーク時には全島の人口が50%も増加することになり、水の供給一つとってみても実現は困難で、住民の生活環境は破壊されます。でも、グアムの島民には、意見を聞かれることはありません。グアムは米国領ですが、米国連邦議会での投票権はなく、大統領選挙にも投票できないからです。

太平洋の島々は、沖縄も含め文化や経済の共通性をもち、歴史的なつながりも強く、20世紀には日米の戦いの戦場となり多くの犠牲者を出しました。現在もその歴史の延長上にあり、同じ民族が政治的な地位の違いで分断されていたりします。グアムは米国の直轄領ですが、マリアナ諸島の他の島々は自治領(コモンウェルス)です。程度の差はあれ米国への依存関係があり、米軍基地の存在による受益者と被害者がいます。テニアンがグアムに代わって基地の受け入れを表明しているように、基地に関わる利権から互いに競合する関係にもなります。

ハワイのオアフ島にはアメリカ太平洋軍の司令部があります。反基地活動家のカジヒロ氏はこれを巨大なタコにたとえ、ハワイから伸びた触手が沖縄やグアムやフィリピンや韓国を締め付けているのだと言います。それぞれのタコの足を切っても、また生えてきます。タコの頭を抑えないかぎり、個別に基地を追い出しても、いずれまた戻ってきます。そのためには各地で基地に反対する人々が手をつなぎ、協力して戦う必要があります。

国家間の安全保障の枠組みで考える人たちにとって、基地問題の解決とは、やっかいな必要悪をおとなしく引き受けてくれる先を、すかしたり、おどしたりして見つけ出すことです。米軍基地は日本から出て行けというだけでは、米軍駐留は抑止力であるとする主張に有効に対抗することはできないでしょう。軍事拡張で得をするのは誰なのか、その犠牲になるのは誰なのか、この構造をあぶり出さなければなりません。そのためにも、戦略基地の拡大に反対する住民たちの国際的な連帯はたいへんに重要な動きだと思います。(中野)

★ ニュースレター第30号(2010.7.10)
★ DVD 2010年度 第4巻 「海外に広がる米軍基地」に収録

☆番組に出演していた秋林こずえさんと、琉球新報の前泊博盛さんを東京に迎えて、基地問題についてのシンポジウムをやります → 「沖縄-グアムから米軍基地を問う」(2010年10月24日@早稲田 日本キリスト教会館4F会議室) DVDの会場販売あり

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☆グアムの状況については、こちらの動画も参考になります→ ・太平洋の「不沈空母」グアム 米軍基地移設で潰される先住民社会(10分)

世界の米軍基地については、ここにまとめてあります次のようなセグメントをみていただくとわかります

この番組については、こんな記事も → 弱者に嫌なものを押しつけるという生き方(「沖縄タイムス」紙6月1日付『金平茂紀のニューヨーク徒然草(31)』より)

*キール・カジヒロ (Kyle Kajihiro )ハワイのアメリカ・フレンズ奉仕団American Friends Service Committee in Hawai'i.の専務理事(program director) ハワイの反基地闘争ネットワークDMZ-Hawai'i / Aloha'Ainaを推進している活動家

*秋林こずえ 日本の研究者、活動家、婦人国際平和自由連盟(Women's International League of Peace and Freedom)や Women's International Network Against Militarismのメンバー

*マーヴィン・ウォンパット=ボルハ(Melvin Won Pat-Borja) グアムの教育者、詩人。グアムの反基地運動争ネットワーク"We Are Guahan " のメンバー

Credits: 

字幕翻訳:中村達人・中野真紀子