先住民活動家デニス・バンクス「同化政策は失敗」

2012/10/8(Mon)
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アメリカ先住民の活動を第一線で支えて来たデニス・バンクスは、4歳で家族と引き離されて寄宿学校に入れられ、先祖の言語や文化を忘れさせる教育を受けました。この事業を主に担ったのはキリスト教の教会でした。言葉の喪失は文化の喪失、アイデンティティの喪失です。「新大陸発見」を「コロンブスの日」として祝い、町や村に先住民との戦争で手柄を立てた軍人の名をつけ、先住民の子供たちを家族から隔離して同化政策を施すー侵略者の言葉でしか語ることを許さない政策は米国に限った事ではありません。

戦争はしばしば「相手の利益のために」あるいは「自衛のために」行われ、「正しい戦争」と呼ばれました。ニュルンベルク裁判では戦勝国の戦争犯罪は裁かれませんでした。パレスチナに存在したアラブの村々は破壊されユダヤの名称に替えられました。土地や言語を失った民族は支配者に従属するしかない存在になれと言われます。自立への道を永遠に閉ざし、労働力として利用される以外は抹殺される存在であることを受容させる植民地化が進んでいきます。

イスラエル国家の占領・戦争行為の国際法違反を告発する「パレスチナに関するラッセル法廷」でデニス・バンクスは、アメリカ先住民とパレスチナ人にふりかかった苦難はどちらも米国政府が関与したものだと述べました。そして米国政府の先住民政策は失敗だったと付け加えています。アントニオ・グラムシに「知性の悲観主義、意志の楽観主義」という有名な言葉がありますが、それをデニス・バンクスの言葉にみるようです。

絶対権力が使えない民主主義国の支配者たちは日々、彼らの利益にはたらく政策を、知らされざる大衆が民主的に支持するようメディア・コントロールに励んでいます。先住民族が何をどう奪われたのか、パレスチナで何が起きているのかを知ることは、本当の民主主義を守る手段の1つになるでしょう。(桜井まり子)

*デニス・バンクス(Dennis Banks):アメリカ先住民の活動家で「アメリカインディアン運動」の共同設立者。2012年、35年間拘禁されている先住民活動家レナード・ペルティエの釈放を訴え、サンフランシスコからワシントンまで徒歩で横断する三回目の「ロンゲスト・ウォーク」を行った。

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字幕翻訳:川添峡子/ 校正・Web作成:桜井まり子