ニューヨーク州の無人機基地に抗議  政府の犯罪を告発するのは市民の義務

2011/11/4(Fri)
Video No.: 
2
14分

2011年11月はじめ、ニューヨーク州シラキューズ市で風変わりな裁判が開かれました。ふだんは酔っ払い運転や万引きなどが裁かれる法廷で、裁判官の前に立ったのは「ハンコックの無人機に反対する38人」。同市のハンコックフィールド米空軍州兵基地からアフガニスタンに無人機が出撃されていることに抗議して基地の入り口前で寝転び死体を演じた抗議運動のメンバーでした。

被告側から参考人に選ばれたのは、ジョンソン大統領の元で司法長官を務めたラムゼイ・クラーク氏。小さな法廷で氏は、政府の不正を知った市民が行うべき義務を4時間近くにわたって説き、再選を間近にひかえていた判事は、熱心に耳を傾けました。ハンコックフィールド基地は2009年からアフガニスタン戦争の無人機出撃基地として使われています。「市民たるものは、犯罪が行われているのを目撃した際には行動を起こす義務があるのです。この論理は第二次世界大戦までさかのぼります。ドイツ政府の高官たちは政府内の他の部門が国内外のユダヤ人600万人を処刑したときに、何が行われているのかを知っていました。しかしそれに対し何も行動を起こさなかった。彼らは戦後のニュルンベルク裁判で、その責任を問われることになりました。私たちの行動原理も同じです。私たちの政府が無人機を使って犯罪を行っている。それに対し私たち市民は、行動を起こす義務を負っているのです」」と、38人の被告団の1人である退役大佐のアン・ライトは話します。

オバマ政権は、「テロとの戦い」と称する攻撃で無人機を中心に位置づけています。生身の米軍兵士を直接の危険にさらさずに済み、コストパフォーマンに優れているというのが無人機使用の売りで、大統領は民間人の被害はほとんど出ていないと主張しています。けれどもNYタイムズ紙の報道(2012年5月29日)によると、オバマ政権は、爆撃地周辺にいる男性(赤ん坊などを除いた戦闘可能な年齢の男性)はすべて戦闘員とみなすのだと米消息筋は語っています。
「ハンコックの無人機に反対する38人」への判決は、11年12月に大半のメンバー、12年3月に残りのメンバーに対して出され、いずれも有罪とされました。それでも最初の逮捕から1年後の12年4月には、コード・ピンクの共同創設者メディア・ベンジャミンも加わり、再び非暴力のデモが基地前で行われました。そして、再び逮捕。辛抱強い運動が続けられています。(大竹秀子)

*アン・ライト(Ann Wright) 退2011年4月にニューヨーク州シラキューズ市のハンコックフィールド米空軍州兵基地での無人機MQ-9 Reaper の使用に対して抗議行動を行った「ハンコックの無人機に反対する38人」の一人。米軍に29年間勤務大佐で退役。のち16年間、国務省の高官も務めた。2003年にイラク戦争に抗議して国務省を辞任した。
*エド・キナン(Ed Kinane)「ハンコックの無人機に反対する38人」の一人。シラキューズ平和評議会会員。

Credits: 

字幕翻訳:田中泉/校正:大竹秀子
全体監修:中野真紀子/サイト作成:丸山紀一朗