バンダナ・シバとモード・バーロウ 母なる大地の権利を語る (アースデイ特番)

2011/4/22(Fri)
Video No.: 
1
33分

2011年4月22日、アースデーを記念する特別番組です。デモクラシー・ナウ!では、政治・経済のグローバル化とからんで深刻化する地球温暖化問題を熱心に追ってきました。2009年のコペンハーゲンでの国連気候変動サミット(COP15)、ボリビアで開かれた「気候変動と母なる大地のための世界民衆会議」、カンクン国連気候サミット(COP16)など節目の取材はもちろん、BPの石油流出、石油・天然ガス開発に関するタールサンドやフラッキングによる汚染、石炭の山頂除去採炭、ゾンビ原発の危険など。もちろん、日本の福島原発事故にからむ問題に熱心に追っています。バンダナ・シバとモード・バーロウという2人の著名な環境保護活動家が登場するこのセグメントも、まずはインド出身の活動家、シバさんへの、「日本の原発大事故はインドにどんな影響を与えるのか?」という質問から始まります。」

日本の原発から漏れた放射能による魚の汚染に関する報告書に書かれた「人体に影響はなく心配は無用」という言葉に、カナダ出身の水の活動家バーロウさんは、「地球の他の生物を考えない この人間中心的な考え方こそが問題」だと嘆きます。そして、「2030年までに世界の水需要は供給を4割上回る」「これがどんなに恐ろしい数字かどんな苦しみが起きるのかわかってない」と「すべての命をはぐくむ源」で「生態系の基本」である「水」の貴重さへの無関心を憂います。一方、物理学者でもあるバンダナ・シバさんは、原子力発電について、「原発とはお湯をわかすために核分裂を起こし、その過程で危険な放射能が大量に出す愚行」と明快に切り捨てます。

インドでもカナダでも、経済開発・エネルギー開発と称して、環境や人々の生存に大きなリスクをもたらすプロジェクトが進行中です。巨大資本と国家が絡み、軍の出動や暴力の行使を伴うことも多い環境破壊ですが、2人が希望のよりどころとするのは、ボリビアなどが推進する「母なる大地の権利」を求める動きです。

ボリビアでは人間と同じ権利を自然に与える法が成立目前で、国連総会でも、自然に対しても人間と同等の権利を与える国際基準についての論議が行われました。「自然と人間とは別々の存在だとする見方は、知性のありようとして時代遅れ」「大半の文明は 世界を関係や結びつきで見てきた」「母なる大地の権利という考え方は、人と自然が繋がっているという感覚を蘇らせてくれる」とシヴァさんは、語ります。自然の商品化という考え方が地球温暖化対策の中でさえまかり通る危機的ななりゆきではあるけれど、大丈夫。地球全体から見れば、自然を尊重し恵みに感謝して共に生きる、「母なる大地」という考えを信じる人々・文化の方が絶対に多数の意見なのだからと、シバさんは言い切ります。そのゆるぎない自信は、チェルノブイリやBPや福島原発で痛めつけられた地球を悼み、ともすれば暗い気持ちに陥りがちな人々にも、勇気とやる気を与えてくれそうです。(大竹)

★ ニュースレター第42号(2011.7.25)
★ DVD 2011年度 第1巻 「巨大市場インド」に収録

*モード・バーロウ(Maude Barlow) カナダ最大のアドボカシー団体「カナダ人評議会」の議長で、「ブループラネット・プロジェクト」の創設者。『BLUE GOLD―独占される水資源』や『"水"戦争の世紀』など著書多数。もうひとつのノーベル賞として知られるスウェーデンのライト・ライブリフッド賞 (Right Livelihood Award)も受賞している。最新書はBlue Covenant: The Global Water Crisis and the Coming Battle for the Right to Water(『水色の約束:グローバルな水資源の危機と水への権利をめぐる新たな闘争』)

*バンダナ・シバ(Vandana Shiva) 世界的に知られる環境問題の指導的活動家、思想家。物理学と環境学を教え、「科学・技術・環境科学のための研究基金」の理事をつとめる。原 産の種子の使用と多様性を訴える「ナブダニャ(9つの種子)」運動を創始した。1993年に「もう1つのノーベル賞」を受賞した。『アース・デモクラシー ―地球と生命の多様性に根ざした民主主義』など著書多数
Credits: 

字幕翻訳:田中泉/校正:大竹秀子
全体監修:中野真紀子/サイト作成:丸山紀一朗