AIG救済はウォール街インサイダーによる連邦政府のっとり

2009/3/25(Wed)
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政治評論家マット・タイビが、AIG救済問題の真相を追及します。タイビによれば、世界的規模の経済破たんと政府による救済措置は一種のクーデターです。金融業界は長年にわたり選挙を金で動かし、金融規制を骨抜きにしてきましたが、ついに今回の金融危機で、少人数のウォール街インサイダーによる政府の乗っ取りが完成したのだと言います。

今回の金融危機で目立つのが、ゴールドマン・サックスの焼け太りです。AIG救済問題も、じつはゴールドマン・サックスの救済だったとタイビは言います。ゴールドマン・サックスはAIGから200億ドル相当の保険を買っていたので、AIGが破たんすればこの債権を失うことになるからです。ここで問題なのは、緊急援助を実施したポールソン前財務長官は元ゴールドマン・サックス社長であり、救済されたAIGにCEOとして送り込まれたリディ会長もゴールドマン・サックスの社員。ガイトナー現財務長官の腹心もGSの元役員です。

金融危機では誰もが財政的な損失をこうむりました。でも政治的には、ウォール街が勝利を収めたのだとタイビは言います。彼らはいまや米国の財政政策を牛耳るようになったからです。連邦準備理事会や財務省も支配下に置き、金融再生計画を利用して前人未到の領域に踏み出しているのだと。救済資金によって作られた政府が経営する巨大持ち株会社が、あらゆる不良債権を吸収し、規模もリスクも世界最大のヘッジファンドとなるのです。この複雑な会社の運営方法を知っているのはウォール街のインサイダーだけです。

金融派生商品があまりにも複雑化したおかげで、普通の人々には理解できません。現在の制度を把握して危機に対処できるのは少数の専門家だけだという理屈で、政府の救済措置を仕切るのは、この事態を招いたウォール街出身の元高官や現役ヘッジファンド関係者ばかりで、議会による監査も許されません。こんななかで、お手盛りの業界優遇政策が取られていくのです。(中野)

* マット・タイビ(Matt Taibbi,)ローリングストーン誌のコラムニストで、他にも様々な雑誌に政治評論を書いている。1990年代の大半を旧ソ連で過ごし、モスクワの英字フリーペーパーThe eXile.の共同編集者として活躍し、The Exile: Sex, Drugs, and Libel in the New Russiaを共同執筆した。他にも著書多数。番組で取り上げられた記事はローリングストーン誌3月23日号に掲載されたThe Big Takeover(巨大な乗っ取り)。

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字幕翻訳:中村達人/校正:関房江
全体監修:中野真紀子