帰還兵が語るイラク市民への攻撃 「自分が同じことをされたら反乱軍に参加するに違いない」 後編
イラク戦争の最前線で戦っているアメリカ兵たちは、この戦争をどう思っているのでしょうか?アメリカの進歩的週刊誌『ネイション』誌が、ほぼ雑誌全体を使って兵士50名の証言を掲載し、話題を呼びました。DN!ではそのうち数名に直接インタビューして、兵士たちの生の声をお届けします。
イラクでの任務中特に辛かったのは「家宅捜査」を行ったときだったと、何人もの兵士が口をそろえます。「あの家にテロリストがいるらしい」という情報を得たら、まるでビンラディン自身を捕らえるかのような荒々しい態度で、夜中に突然扉を蹴って家に押し入り、家中を捜査して「怪しい」と決めた人を連行する。でもそもそもの不審者情報がいい加減なので、ほとんどの場合は無実の家族の生活をめちゃくちゃにするだけで終わるのだと。
あるとき「外に寝ている怪しい集団」の捜査を命じられたウエストファル二等軍曹は、一生忘れられない経験をしたと語ります。暗がりの中で「捜査」をする場合、懐中電灯を捜査対象となる人に向けるわけですが、懐中電灯が武器の先についているため、自然に武器も一緒に向けることになる。寝ている人たちを蹴り起こして一斉に電灯をつけてみると、そこにいたのはただの老人と女性とこども。家長である老人は、恐怖のあまり身の毛もよだつような叫び声を上げ、その声が今でも毎日聞こえる、とウエストファル二等兵。フセインの残酷な政権下で、諜報機関を恐れて生きてきた罪もない人たちを急襲し、軍服とヘルメットとゴーグルと光と武器で、更なる恐怖に陥れてしまった…。「自分が同じ目にあったら、間違いなく反乱軍に加わるだろうと思った」と、彼は言います。
罪も無い民間人をたくさん犠牲にしてしまったものに、もう一つ、軍の車両隊列があります。米軍の車が何台も連なって走るコンボイに他の車が近づきすぎると、威嚇射撃をするのですが、それが誤って車内の人を殺してしまうことがよくあります。ところが、車体の後ろに「100メートル以内に近づくな」と書かれてあっても、その文字は10メートルくらいまで近づかないと読めなかったり、コンボイだと気づかずに近づいてきた車を必要以上に乱射する部隊があったり、とにかく理不尽なことが多かった様子を、フラット軍曹は証言します。
どこまで犠牲者を出すのか、そもそも何のための犠牲なのか。そんな疑問を強く持つ帰還兵が多いのも、このイラク戦争の特徴と言えるかもしれません。 (古山)
★ DVD 2007年度 第4巻 「2007年10-11月」に収録
*レイラ・アル=アリアン(Laila Al-Arian )『ネイション』誌の記事「もう一つの戦争-イラク戦争退役軍人が語るイラク市民への攻撃」の共同執筆者。
*ジョン・ブルーンズ 軍曹 (Sgt. John Bruhns) 2003年4月より1年間、第1大隊第1部隊第3旅団に所属して、バグダッドとアブグレイブに配置された元兵士。
*ガレット・レッペンハーゲン特技兵 (Spc. Garett Reppenhagen) 2004年2月から、第1歩兵団第263部隊所属の装甲機動偵察兵ならびに狙撃兵として、バクバに配置された元兵士
*ティモシー・ジョン・ウェストファル二等軍曹 (Staff Sgt. Timothy John Westphal) 2004年2月より第1歩兵団第18歩兵部隊に所属して、1年間ティクリット郊外に配置された元兵士
字幕翻訳:永井愛弓
全体監修:古山葉子