アノニマス

アノニマスのように政治・社会的な主張を掲げてハッカー攻撃をしかけるオンラインのアクティビズムを「ハクティビズム」と呼びます。アノニマス関連の事件として有名なのは2010年12月、ウィキリークスの口座を凍結して支援金の送金を妨害したマスターカードとVISAにハッカー攻撃を仕掛け、サイトを一時的にダウンさせたことです。その他にも、ソニー、PayPal、アマゾン、バンク・オブ・アメリカ、サイエントロジー(宗教団体)、エジプト政府、チュニジア政府、シリア政府などが攻撃対象になりました。なんだかオソロシげな集団に聞こえますが、アノニマスの源流にあったのは日本の2チャンネル文化です。こんなふうに進化したのも、祭りのノリが嵩じたのかも。
デモを牽制するために地下鉄駅構内の通信網を遮断したBIRT(湾岸高速鉄道公社)の暴挙に対し、活動家ハッカー集団「アノニマス」が報復を呼びかけました。「BART作戦」(OpBart)と称する抗議行動の一環として、アノニマス活動家がBARTのウェブサイトに不正侵入し、顧客の名前と電話番号、パスワードなどを流出させました。正義感にかられた行動とはいえ、無関係の人たちの個人情報を勝手に公開することは正当化できるのでしょうか?BART作戦に参加した、ハンドルネーム“X”を名乗るアノニマスの一人にインタビューします。
「ウォール街占拠」でとっても目についたガイフォークスの仮面。占拠運動の拡散とともに全米各地にアノニマスが増殖中です。最近は日本のデモでもちらほらと・・  2010年後半にウィキリークスとのからみで急速にマスコミの注目を集め出したアノニマスですが、そこで語られるイメージは、なにやら怪しげなハッカー集団が、企業や公共機関のサイトを攻撃し、個人情報をさらし出すという危険なものです。でも、彼らの攻撃がどのような動機に基づいているのか、その背景は語られません。相手が「名無しさん」だから、彼らのメッセージには耳を傾ける必要はないのでしょうか。アノニマスって何者なの?2011年夏の事件をもとに、米国での発祥を紹介しましょう。
政治にめざめたサイバー活動家たちが特定の政治主張を掲げコンピューターやネットを使った積極行動を行うハクティビズム(hacktivist)。これを一躍有名にしたアノニマスは緩やかに連帯した匿名の人々の巨大なネットワークです。そこから派生したコンピューターハッカーの集団ラルズセックは、企業や政党、政府に対する数々のサイバー攻撃で名をはせました。3月はじめ、このラルズセックのメンバーとされる5人の男性が逮捕・起訴されました。もっと大きな衝撃は、逮捕者たちの情報を警察に密告したのが、他ならぬラルズセックのリーダー、「サブー」と呼ばれる人物だったことです。匿名性を前提としたネットカルチャーの落とし子のような運動の脆弱性があらわになり、大きな打撃を与えました。サブーはなぜ仲間を売ったのか?今後のハクティビズムに与える影響は?
ウィキリークスは2月27日から民間情報機関ストラトフォーの内部メールを大量に公開していますが、その中に米司法省がすでにジュリアン・アサンジに対する極秘の起訴状を用意しているとの情報が見つかりました。「アノニマス」のハッカーたちがストラスフォー社のサーバーから入手した約500万のメールのうちの1通です。アサンジの訴追をめぐってはバージニア州で秘密の大陪審が開かれていることが以前から報じられていましたが、どうやら正式起訴の決議が出たということのようです。これで米国に身柄を引き渡されれば即座に収監されることになります。そうなればブラッドリー・マニング上等兵のように外部との連絡を絶たれて、拷問に近い独房監禁におかれる可能性もあります。
11月5日は「銀行口座移動の日」。大銀行の横暴に抗議して、みんなで一斉に地元の信用協同組合やコミュニティ銀行にお金を預け変えよう。そんな呼びかけがネットで広まり、全米で7万5千人以上が参加を表明し、信用組合には4万口以上の新規口座が開設され、総額8000万ドルが大銀行から移動しました。11月5日といえばガイ・フォークス・デイ、英国人が反逆者の精神を思い出す日です。この日を選んだのは、もちろんアノニマスやウォール街占拠運動に触発されたから。呼びかけ人はクリステン・クリスチャンという、ごく普通の若者。彼女にキャンペーンを思い立った経緯について話を聞きます。
前のセグメントからの続きで、グレン・グリーンウォルドがウォール街占拠運動についてコメント。占拠の運動の推進力は、税金で救済された銀行の目に余るふるまいに対する怒りです。金融危機の原因は経済政策の誤りだったとしても、それを何倍にも増幅させて経済を破壊したのは金融業界の巨大な不正でした。それなのに銀行に対しては起訴はおろか犯罪捜査さえ行われません。一方、庶民は些細さな違反でも逮捕・投獄されるようになり、この40年間で米国の囚人の総人口に対する比率は5倍に跳ね上がっています。特権階級に対する司法と庶民に対する司法の差をこれほどあからさまに示すものはありません。しかも政府の金で救済された金融投資家たちは、その金を使って選挙に介入し、自らの特権をさらに固めているのです。