「自分が言わなければ誰が言う?」 ジョン・バティスト退役陸軍少将、イラク戦争反対を唱えCBSニュースを解雇される 前編

2007/5/25(Fri)
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30分

 ジョン・バティスト陸軍少将は、31年間も米軍に仕えたエリート軍人でした。イラク駐留米軍将校の中で第2位の高官にあたる中将への昇進を勧められるまで昇り詰めたのですが、この戦争の進め方に反対して、退役することを選んだのです。彼はCBSニュースでニュースコメンテーターを勤めていましたが、イラク・アフガン退役軍人によって設立された政治活動委員会VoteVets.orgのコマーシャルでブッシュ政権の戦略を批判した後、CBSはバティスト氏を解雇。そのことに抗議した活動家団体MoveOn.orgがバティストの再雇用を求める嘆願書に署名を呼びかけたところ、23万人もの署名が集まりました。

 「私は反戦主義者ではない。でも、イラク戦争はとんでもない失策」と語るバティスト氏。「戦争を行うならば、しっかりした国家戦略を示した上で、十分な財源を確保し、兵士たちが十分な物資と人員を備えて戦えるようにするべき。国家動員もたいへん重要。それができないなら、立派な軍人たちを、無駄な戦闘に送り込むべきではない」と続けます。長年軍を愛してきただけに、戦争そのものに反対する論理や良心的兵役拒否者の論理とは、一風違った視点を保っていますが、この戦争が失敗だったという意見には迷いがありません。

 「本来なら、開戦前も開戦後も『敵国』との外交・政治・経済的に交渉する努力が必要なのに、それが抜け落ちている。現政権の国家戦略は、武力をめぐるものだけ」という批判は、戦場で2万2千人の軍人の命を預かってきた、責任ある者の現場の実感から出てきたものなのでしょう。

 インタビューの中でバティスト退役陸軍少将は、グアンタナモ米軍基地収容所の閉鎖も呼びかけ、ブラックウォーターUSAのような民間の警備会社も批判し、ブッシュ大統領が「同じような考えを持った、従順な部下たち」を雇ったのは失敗だったというコメントもしています。

 祖父の代から軍に仕え、米国憲法を守ることと、大統領および上級仕官の命令に従うことを誓ってきた将校、バティスト。憲法と大統領が食い違っていると感じた時、彼が最終的に選んだのは、憲法の方だったのでしょう。(古山)

★ DVD 2007年度 第5巻 「2007年12-08年1月」に収録

ジョン・バティスト陸軍少将(Maj. Gen. John Batiste) 祖父の代から軍人で、本人も31年間軍人としての人生を送ってきた。2004年から2005年まで、イラクにおける米軍第1歩兵団の司令官。CBSニュースのコンサルタントを務めていたが、VoteVets.org のCMでブッシュ大統領を批判したため、解雇された。

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字幕翻訳:下條匠
全体監修:古山葉子