バーモント・ヤンキー原発が廃炉へ 老朽化する原発のゆくえ

2013/8/28(Wed)
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2013年に入って以来、米国の原子力発電産業が急速に収縮しています。改良計画がキャンセルされた5基の原子力発電所を始め、6基の原発の新規構築計画が破棄されたほか、すでに既存の原発5基の廃炉が発表されました。これは、1年間に廃炉が決まった原発の数としては、過去最大です。8月に廃炉が発表されたバーモント州のバーモント・ヤンキー原発は、1972年に運転を開始した、全米で最も古い原発の1つです。放射性物質であるトリチウムの漏えい、周辺土壌からのセシウム137の検出など、安全性の問題がたびたび指摘されてきた同原発は、何十年もの間、原発反対派の抗議の対象でした。

バーモント・ヤンキー原発の運営企業である、米国の大手電力会社のエンタジー社は、市民の強い反対に遭い、さらにはバーモント州上院が2010年に原発の追加運用を許可する法案を否決してからもなお、原発の稼動期間延長を求めて法的手段に訴えていました。

最終的に原発廃炉への決定打となったのはコスト面である、と元原発会社幹部のアーニー・ガンダーセン氏は述べます。原子力発電所は運転そのものに多額の費用がかかること、シェールガスの生産増加によって原子力発電コストの競争力が低下していること、また安全性の確保にかかる多額な費用などを考えると、老朽化したバーモント・ヤンキー原発の稼動を続けていくことは、採算が合わないというわけです。

また同原発は、福島第一原子力発電所と同種の格納容器を使用していますが、このタイプの小型原発は今後さらに廃炉に向かうだろう、とガンダーセン氏は予測します。米国のエネルギー政策は、今後どのように方向転換していくのでしょうか。(永井愛弓)

*アーニー・ガンダーセン(Arnie Gundersen): 全米の70の原子力発電所でプロジェクトをまとめた経験を持つ原子力産業界の元幹部。現在は独自の立場から原子力および放射能に関する証言を提供している。

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字幕翻訳:小椋優子 校正:永井愛弓 サイト掲載:桜井まり子