ナオミ・クライン&アビ・ルイス 労働者自主管理という解決法
『ショック・ドクトリン』の著者ナオミ・クラインと、彼女の夫で英語版アルジャジーラの報道番組司会者アヴィ・ルイスを招き、世界的に拡大しつつある労働者の自主管理運動についての報告を聞きます。二人は2004年にアルゼチンにおける生産設備占拠運動のひろがりを追う記録映画『ザ・テイク』(工場奪取)を制作しました
経営側の論理によって突然職を失った労働者たちが、雇用を守るために工場を占拠し、生産を継続するという動きが世界各地で頻発しています。金融危機の震源地となった米国の場合、信用不安を解消し産業界への円滑な資金提供を促すという謳い文句で銀行に公的資金が注入されましたが、そうして救済された銀行は却って貸しはがしに走ったため製造業が運転資金不足に陥り、工場閉鎖に追い込まれる事例も起きています。
ナオミ・クラインは、政府資金による金融業界「救済」の実体が、一部富裕層による国富の収奪にすぎないと喝破し、公的負債膨張のツケを払わせられるのは、将来の福祉削減や社会の分断と産業空洞化によって苦しめられる一般市民であると警告します。批判の矛先は、雇用確保と産業の活性化を口にしつつも、自由放任主義に絡めとられて、医療保険の社会化や金融規制など、今必要なはずの本質的な改革に及び腰なオバマ政権にも及びます。(斉木)
ナオミ・クライン(Naomi Klein) ジャーナリスト。主な著書に『ブランドなんか、いらない―搾取で巨大化する大企業の非情』(はまの出版)、『貧困と不正を生む資本主義を潰せ―企業によるグローバル化の悪を糾弾する人々の記録』(はまの出版)、The Shock Doctrine: The Rise of Disaster Capitalism (『ショック・ドクトリン』邦訳未刊)がある。アルゼンチンを舞台に、経営者が放棄した工場を占拠して生産を継続する労働者自主管理運動を追う記録映画『ザ・テイク』をアヴィ・ルイスと共同で制作。
アヴィ・ルイス(Avi Lewis) カナダ出身の映像ジャーナリスト。現在は英語版アルジャジーラで「Fault Lines」という報道番組の司会者を務める。記録映画『ザ・テイク』の監督。
字幕翻訳:川上奈緒子 / 校正:斉木裕明
全体監修:中野真紀子・高田絵里