保守論客 クリントン以来の金融規制緩和をファシズムへの道と非難

2008/10/17(Fri)
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レーガン時代に財務長官補佐を努めた保守体制派ポール・クレイグ・ロバーツが、ブッシュ政権の金融危機対策を厳しく批判し、かつての彼の立場を知る人たちを驚かせました。ロバーツは、ブッシュ政権の救済措置は金融機関ばかりを優先し、危機の原因である住宅ローン問題はまったく手をつけていないと批判します。政府の救済資金を、ローンの借り換えや担保の償却に使ってモーゲージ証券の価値を回復すれば、金融危機を根元から治癒することができるのに、それに回すべき資金を金融機関に無駄に注入しているのは、犯罪的でさえあると指摘します。

サブプライムローン危機は、返済能力を超えた借金をした人々の無責任や、住宅金融機関が無理なマイホーム推進政策だけで説明することはできません。その根本にグリーンスパン連銀総裁による金融緩和政策があります。金利を低く保ち、意図的に住宅ブームを引き起こしました。ITバブル崩壊後は住宅バブルが株式市場を支えたのですが、それはつけを後回しにしたにすぎません。

ロバーツによれば、このような傾向はレーガン時代ではなく、クリントン政権から始まりブッシュ政権で進められた3段階にわたる規制緩和がもたらしたものです。
・1999年 グラス・スティーガル法(証券と銀行の分離)の解除
・2000年 デリバティブ商品の大幅規制緩和
・2004年 投資銀行の自己資本比率規制を撤廃

このような規制緩和のとどのつまりが、ファシズムだとロバーツは言います。ブッシュ政権のポールソン財務長官が最初に打ち出した7千億ドルの金融救済案は、この莫大な資金を説明責任なしに分配し、金融システムを完全に掌握するものでした。金融の支配を通じて国の経済を支配するのは国家資本主義、すなわちファシズム経済です。そのような強大な権力が、この危機を乗り切るには必要だと(住宅ローン破綻という根本的な解決は無視したまま)主張する、その姿勢そのものに、ロバーツは危険性を指摘しているようです。(中野)

*ポール・クレイグ・ロバーツ(Paul Craig Roberts)レーガン政権の財務長官補佐。WSJ紙の編集員をつとめたこともある。ジョージタウン大学やスタンフォード大学で教え、『サプライサイド革命』など著書も多い。

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字幕翻訳:中村達人/校正:関房江
全体監修:中野真紀子