ブラックウォーター創業者のムスリム撲滅の使命

2009/8/5(Wed)
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Xe社と社名を変えてみても、ブラックウォーター時代の悪行は消せません。次々とスキャンダルが発覚していますが、今回は創業者エリック・プリンスの宗教的な背景に焦点を当てます。

ブラックウォーター社の元従業員2人が2009年8月に連邦裁判所に提出した宣誓陳述で、エリック・プリンスが同社の犯罪を捜査するFBIに協力した人々の殺害に関与した疑いが浮上しました。イラク人殺しを奨励したという証言もあります。プリンスの直接犯罪関与についての内部の人間による初めての証言です。

新興の民間傭兵会社ブラックウォーターが急速に勢力を伸ばした背景には、米国で隠然とした力を持つ急進的キリスト教右派の運動が大きく関わっています。2代目ジョージ・ブッシュを大統領にすえて、ほとんど共和党をのっとった急進的キリスト教右派。この過激な原理主義運動の仕掛け人のひとり、ゲイリー・バウアーやジェイムズ・ドブソンに資金を与えたのが、エリックの父親エドガー・プリンスです。御曹司のエリックは、まさにキリスト教右派運動のクラウン・プリンスでした。

プリンスは最初、初代ブッシュ政権でインターンをしていましたが、伝統的保守派で宗教勢力を嫌った父ブッシュに見切りをつけ、二期目をかけた大統領選挙では共和党の対抗馬である極右のブキャナン候補の陣営につきました。ブッシュが破れ民主党政権の時代になると、彼は軍隊に入ります。海軍の特殊部隊に入隊して経験をつみ、除隊して民間の軍事訓練会社を設立しす。

やがて彼は息子ブッシュに近づいて巨額の選挙資金をつぎこみ、大統領に当選したブッシュが「対テロ戦争」を宣言すると、米国の軍事行動にブラックウォーター社が大きな役割を果たすことになります。ブッシュ大統領はテロ戦争を「十字軍」と呼び、アフガニスタンとイラクの2つのイスラム国家を占領して、プリンスの軍隊に警備させたのです。

プリンス自身も十字軍への思いは強く、中世の騎士団にあこがれ、その伝統に連なろうとカトリックに改宗したほどです。「イスラムを地上から抹殺する世界戦争」の十字軍戦士を自認したプリンスが、社員に対し「イラク人殺しを奨励していた」との証言もあります。ブラックウォーターの職員がイラクで一般市民に対する過剰な武力行使を行ったことには、こうした意図的なものがあったことが疑われます。(中野)

★ DVD 2010年度 第2巻 「キリスト教右派」に収録

*ジェレミー・スケイヒル Jeremy Scahill ジョージ・ポーク賞受賞の調査報道記者。ベストセラーになった、Blackwater: The Rise of the World’s Most Powerful Mercenary Army (『ブラックウォーター 世界最強の傭兵軍の勃興』)の著者。今回のインタビューで取り上げた記事Read full story: "Blackwater Founder Implicated in Murder" はTheNation.comでよめる。

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字幕翻訳:斎藤千紘/校正:桜井まり子
全体監修:中野真紀子