「すべての始まり」デビッド・ウェングローと故デビッド・グレーバーの共著は新しい人類の歴史を語る

2021/11/18(Thu)
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10分

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学生字幕翻訳コンテスト2022 課題1「民主主義と平等の起源 」の受賞作品です。

負債論やオキュパイ運動の理論的支柱として有名な人類学者デビッド・グレーバーは、昨年急逝する直前に一冊の本を遺しました。考古学者デビッド・ウェングローとの共著The Dawn of Everything: A New History of Humanity(仮訳『すべての始まり ~新しい人類史』)です。
この本は、「西洋思想」の根幹と考えられている民主主義や平等の観念が、じつは北米先住民の文化に大きく影響されていたことを、ヨーロッパからの植民者と現地の人々との遭遇にさかのぼって検証しています。啓蒙思想の誕生に北米先住民文化が果たした役割は決定的と思われるのですが、彼らの貢献はその後の歴史から抹消されてきたのだと2人は主張しています。啓蒙思想が西洋のユニークな特性であるとして、そのような優れた資質を持たない他の人々は服従させて当然とする、長年染みついたやっかいな思考パターンに強烈な一発を食らわせた感じです。


また人類の格差の起源についても、農耕の開始と都市文明の発達にあるというのが定説ですが、広く歴史を検証すれば必ずしも人口密集や技術の高度化により社会的自由が失われるわけでもないと2人は主張します。 格差のない自由な社会をめざすことが、文明の発達とは相いれない非現実なユートピア論と決めつけず、人間社会の在り方についてもっと柔軟に思考することが大切ですね。

この本を完成させたわずか数週間後、デビッド・グレーバーは59歳で急逝しました。彼は、"We are the 99%"というキャッチフレーズの創出に一役買ったことで知られています。彼の著書『負債論~貨幣と暴力の5000年』は債務の帳消しを訴えています。

☆課題は冒頭から10分ぐらいまでです。

*デビッド・ウェングロー(David Wengrow):考古学者。ロンドン大学ユニバーシティカレッジ教授。The Dawn of Everything: A New History of Humanityの共著者

Credits: 

字幕翻訳:澤田晶子/ルゼ・アリエ  神戸市外国語大学大学院外国語学研究科英語学専攻修士1年・2年 (コンテスト受賞時)
校正:中野真紀子