ウィキリークスのイラク民間人爆撃ビデオ 米兵の行動は訓練どおり
ウィキリークスに漏洩された米軍所蔵のビデオには、2007年バグダッド郊外で米軍ヘリが民間人を襲撃し12人を殺害した現場が映っています。犠牲者の中にはロイター社の職員もいましたが、肩からカメラ機材を下げていただけで武装していると疑われ、明らかに丸腰だった周囲の人々とともに爆撃を受けました。たまたま現場を通りかかり、道に倒れている負傷者を救出しようとしたトラックも爆撃され、運転手は死亡、乗っていた彼の子供2人も大ケガをしました。ヘリコプターの兵士たちと地上部隊との交信も記録されていますが、そこにはイラク民間人を人間とみなしていない冷酷な会話が聞き取れます。
この衝撃的な映像がネットに流れると、兵士たちの行為を犯罪だと非難する声があがりましたが、その一方で、軍事的な見地からすれば兵士たちの行為はごくあたりまえの戦闘行為であるとするシニカルな評価もあります。この事件を起こしたブラボー2-16部隊にかつて所属していた退役兵ジョシュ・スティーバーは、ここから浮かび上がる本当の問題は、兵士の残虐行為の背後にあるシステムそのものだと言います。
「ビデオを見れば、この兵士たちを断罪するのが素直な反応でしょう。彼らの行為を正当化するわけではありませんが、それでも軍事的な観点からすれば、彼らはまさに訓練された通りに行動していたのです。ビデオで衝撃を受けたと言うのなら、わたしたちはその背後にあるシステムそのものを問わなければなりません」。
民間人に対しても迷わず銃を向け、発砲できるように訓練し、多少の犠牲はしかたがないと教え込むのが軍隊です。そういうことに疑問を抱き、帰還後に反戦運動に入り、米軍の犯罪行為を証言した人々もいます。しかし大半の帰還兵は戦場で受けた心の傷を内に抱え込んだまま誰にも相談できず酒や薬に頼ったり、普通の市民社会に適応できずに犯罪や自殺に走ることも少なくないようです。このビデオから見て取れるのは、兵士たちが日々体験している生々しい現実と考えるべきもののようです。(中野)
*ジョッシュ・スティーバー(Josh Stieber)良心的兵役拒否者として除隊した反戦イラク帰還兵の会(IVAW)のメンバー。2007年バグダッドで起きた米軍ヘリによる民間人爆殺事件を起こした元ブラボー2-16部隊に所属していた。
字幕翻訳:桜井まり子/校正・全体監修:中野真紀子