石油大手シェブロンはビルマ軍事政権との関係解消を
ビルマ(ミャンマー)は、鉱石や宝石、天然ガス、チークの森などの天然資源に恵まれており、ビルマ軍政はこれらの資源を積極的に開発・輸出して外貨を稼いでいます。中でも天然ガス輸出は重要な外貨獲得源となっており、数年前から天然ガスの輸出は同国の輸出総額の約25%を占めています。
ビルマ軍政はそうして得た資金を、国民の医療や教育ではなく、主に軍隊の存続と拡大のために使ってきました(ビルマ軍の兵士数は、1988年に18万人だったのが現在は45万人以上)。さらに、購入された武器はほとんどがビルマ国民に対して用いられ、ビルマ軍兵士が全国で無数の人権侵害を起こしてきました。これらの人権侵害は、軍政が開発を行う際に行われ、事業から得た収入がさらなる抑圧や人権侵害に費やされるという悪循環に陥っています。
1990年に、ビルマ沖のアンダマン海にあるヤダナ田から天然ガスを輸送するパイプラインが建設されました。パイプラインの沿線には、モンやカレンなどの非ビルマ民族が住んでいて、住民のほとんどが農業や漁業、地域内の商売に携わっています。ところが、地元住民との協議もないまま建設が決まると、石油会社の警備を名目に、ビルマ軍の部隊が大量に地域に投入されました。住民を暴力で脅して移住させ、駐屯地の整備や物資運搬などのために働かせました。住民に対する拷問、強姦、殺人もありました。
このような被害を受けた住民が、米国裁判所で、ヤダナ・パイプライン建設に投資したユノカル社(2005年にシェブロン社が買収)に対して、損害賠償を求める訴訟を起こし、2005年にユノカル社が原告側に賠償金(推定3000万ドル)を支払う形で和解しました。
一方、アメリカではビルマ軍政制裁のため、1997年以降、アメリカ企業のビルマでの投資・操業を禁じています。しかし、それ以前から操業していた会社は例外として認められたので、ユノカル社を買収することにより、シェブロン社は操業許可を正式に得ています。未だにビルマ軍を警備に雇いつつ、ビルマ軍政を結果として支えてしまう形の操業を続けていることに関して、国連やアメリカ国内では、シェブロン社に対して非難が高まっています。
このセグメントでは、ユノカル訴訟を描いたドキュメンタリー映画『Total Denial (完全な否認)』を紹介しつつ、地元住民の代理としてユノカル訴訟を起こした、ビルマ支援NGOアース・ライツ・インターナショナルの代表、キャサリン・レッドフォード弁護士の話を聞きます。また、デモクラシー・ナウ!やジャーナリストのジョン・ピルジャー氏が以前行った、アウンサンスーチー氏へのインタビューも紹介します。
(秋元由紀 メコン・ウォッチ 米国弁護士として原告弁護団にも関わっていた)
*キャサリン・レッドフォード (Katherine Redford) 弁護士。ユノカル訴訟を起こしたビルマ支援NGO「アース・ライツ・インターナショナル」代表
翻訳字幕:桜井まり子
全体監修:古山葉子