エクアドルの先住民と米大手石油企業のシェブロンとの戦い

2007/12/27(Thu)
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 エクアドルの先住民が、石油採掘に伴うアマゾン森林の汚染を理由に、120億ドルの損害賠償を求めてシェブロンを告訴している件に関して、調査ジャーナリストのグレッグ・パラスト氏がリポートします。

 エクアドルの熱帯雨林の奥に住むコファン族は、何千年も前から手工芸や狩猟で生計を立てる、平和な生活を送っていました。ところが、1972年にやってきたテキサコ社(2001年にシェブロンと合併してシェブロン・テキサコ社に。現シェブロン社)は、「石油を肌に塗ると痛みに効く」と嘘を言って、コファン族には理解できないスペイン語で書かれた石油採掘の許可契約書を締結し、開発を進めたのです。以来、周辺に住むコファン族には、血を吐いて死ぬ人など、病人が絶えなくなりました。先住民族を含む住民の訴えによると、テキサコの現地会社は1972年から1992年にかけて有毒な排水や原油を廃棄し続け、その結果熱帯雨林、農作物や家畜に被害が及び、住民の間のガンの発病が増加したといわれています。

 そこで昨年、周辺住民がシェブロン社に対して120億ドルの訴訟を起こしました。シェブロンの弁護士は「コファン族が訴訟に勝つには、例えば小児ガンが石油採掘のせいだと証明する必要があり、しかもそれがシェブロン・テキサコ社の石油採掘のせいだと証明する必要がある。そんなの不可能」と笑います。近年、外国の石油企業は追い出され、エクアドルの国営石油会社「ペトロエクアドル」が取って代わっているので、シェブロン社は、「被害があるとすれば、それはペトロエクアドルのせいだ」と主張しているのです。

 これに対して、2007年1月から大統領を務めているラファエル・コレア氏は、パラスト氏のインタビューにこたえて、国営石油会社が創業を引き継ぐ前に損害はすでにあった旨を力説します。コレア大統領は、「マイアミにエクアドルの基地を作らせてくれない限り、エクアドルの米軍基地を撤退させるべきだ」と、南米唯一の米軍基地の撤退を強く迫ったこともある大統領。この訴訟は、石油会社が先進国ではしないようなことを途上国ですることに対しての警告であり、私的訴訟ではあるけれど、コファン族が勝訴したら賠償金の徴収には政府も協力すると言っています。

 シェブロンは、ライス国務長官が以前取締役を勤めていた会社で、「コンドリーザ・ライス」という超大型タンカーを持つほど。他方、コファン族の訴訟はエクアドル政府にバックアップされ、そのエクアドル政府は、ブッシュ政権を強く非難するベネズエラのチャベス大統領と良好な関係を持っています。この訴訟はブッシュ政権とチャベスの闘いだと見る眼もありますが、果たして行方はどうなるのでしょうか。(古山)

* グレッグ・パラスト (Greg Palast)  企業の不正や恐喝行為の調査からイギリスのBBCやガーディアン紙などを中心に活動をする、著名なアメリカ人調査報道記者。主な著書にArmed Madhouse(『武装したマッドハウス』) や、ニューヨークタイムズ書評ベストセラー 『金で買えるアメリカ民主主義』(角川文庫) など。「この時代の最も偉大な調査報道記者」(『トリビューン』紙)と称されている。デモクラシー・ナウ!でも、彼の切れ味のいいリポートがたびたび登場する。 

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翻訳字幕:永井愛弓
全体監修:古山葉子