オバマ政権による空前の武器輸出が中東の戦火をあおっている?

2015/4/7(Tue)
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オバマ政権の下で、米国の武器輸出が前代未聞の水準に達していたという驚くべき報告が発表されました。国際政策研究所の武器取引専門家ウィリアム・ハートゥングによれば、オバマ大統領が最初の5年間で認可した武器輸出の額は1690億ドル以上に達し、すでにブッシュ政権の8年間における総額を300億ドルも上回っているのです。その6割は中東に輸出され、最大の輸入国はサウジアラビアです。数年間で膨大な量の兵器を購入しました。そのサウジは3月に隣国イエメンへの爆撃を開始し、市民に多大な被害を与えながら攻撃をエスカレートさせています。HRWによればクラスター爆弾のような非人道的兵器も使用され、米国製の武器が市民の無差別攻撃に使われています。

そもそも中東が現在のような大混乱に陥ったのも、米国による干渉と大量の武器供与が大きな原因です。内乱によって武器が敵方にも渡ってしまい、どの陣営も米国製の武器で武装している状態で、もちろんISISにも渡っています。中東の人々はもとより、そんなことに税金を使われる米国人にとっても耐え難い不条理ですが、軍事企業はウハウハです。ロッキード・マーチン社のCEOマリリン・ヒューソンは、決算報告会でこう述べました。「たとえイランと和解しても、中東全体の不安定は続くので心配はありません。中東各国は国防の強化を痛感しているため、我が社にとっては“成長市場”です」。紛争や国際緊張によって儲ける会社ですと公言しているわけですが、彼女が「もう一つの成長市場」として挙げる地域はアジア太平洋です。「北朝鮮をめぐる不穏な情勢が続き、日中間にも緊張が走っている東アジアには、成長市場として期待をかけている」と。米国政府の軍事調達が落ち込んだ分を補うため、海外向け販売の比率を今後数年で引き上げたいそうです。なんだか心配ですね。

一方日本は昨年春から武器輸出禁止の原則を撤廃し、イスラエルのような紛争当事国にも堂々と武器を提供できることになりました。今年10月1日に発足することになった「防衛装備庁」は、自国の軍事装備の開発から調達までを一元管理するだけでなく、武器の輸出や国際共同開発を推進するのも目的のようです。経団連はさっそく、防衛武装品の輸出を国家戦略として推進すべきだと提言を出したようですが、いまさら言われるまでもなく、政府はすでに昨年末から日本企業の武器輸出を支援する低利子融資制度を検討し、そればかりか日本の武器を購入する途上国のために購入代金を低利で融資したり、無償供与したりする制度も検討中と報道されています。民間の武器輸出に貿易保険を適用し、相手国が支払い不能になった場合には私たちの税金で損失を補填することも検討している模様で、まさしく国を挙げて軍需企業に貢ぐ体制にむけて驀進中です。(中野真紀子)

*ウィリアム・ハートゥング(William Hartung) ニューヨークの世界政策研究所武器情報センター長を15年務めた後、ワシントンのシンクタンク「ニューアメリカ財団」でアメリカ戦略プログラム上級リサーチフェローをつとめ、現在は、国際政策研究所の武器及び安全保障研究プロジェクトの責任者。『ブッシュの戦争株式会社』、『ロッキード・マーティン 巨大軍需企業の内幕』などが邦訳されている。このインタビューのもとになった記事は「オバマの武器バザール過去最大の販売と弊害」

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字幕翻訳:雑賀光/校正:中野真紀子