学生集団失踪事件で揺れるメキシコ 政府と犯罪組織が融合して市民を弾圧

2014/11/13(Thu)
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学生43人の失踪事件と捜査当局の対応をめぐりメキシコ各地で抗議行動が起き、現体制への批判が高まっています。

事件の紹介:メキシコ南部のゲレロ州で2014年9月21日夜、教員養成学校の生徒が乗るバスがイグアラ市警察に襲撃され、6人が死亡、25人が負傷し、43人が行方不明となりました。アヨツィナパ師範学校は貧しい農村地帯の子弟から教員を育て地方の生活水準の向上を図るために設立された地方師範学校の一つですが、こうした地方の自助努力は連邦政府によって反体制運動の温床とみなされ、しばしば弾圧を受けてきました。今回の事件でも、学生たちが抗議行動に向かうところだったという報道がなされていますが、学生たちの関係者たちは否定しています。(ウィキペディアに詳細が載っています)

この事件の捜査で70人以上が逮捕され、警察に襲撃を命じたとされるイグアラ市長も逮捕されましたが、捜査当局の説明には矛盾が目立ちます。集団埋葬された遺体が次々と見つかり学生たちのものとされましたが、やがて別人のものだと判明します。7週間以上も経つのに学生たちの行方はわからず、挙句にヘスス・ムリリョ・カラム検事総長が、学生たちはコクラのごみ集積所で殺害され、死体は焼却されたという、またしてもいい加減な発表をしたことが、大規模な抗議行動につながりました。ゲレロ州では政府の建物に火がかけられ、主要道路がデモ隊により封鎖され、抗議行動はメキシコ各地に広がっています。

現地で取材している独立ジャーナリストのジョン・ギブラーは、今回の学生失踪事件で露呈したのは、警察と麻薬ギャングの完全な融合だと指摘します。メキシコでは1970年代には国家によるテロが猖獗を極め、多数の市民が「強制失踪」に遭い、切断された死体がさらされました。そうした従来からの暴力形態と、新手の麻薬犯罪がらみの暴力が合体し、もはや両者は1つの産業の別部門にすぎなくなったと、ギブラーは言います。こうした闇の部分が大規模抗議運動でいっせいに噴き出し、欧米メディアが改革派ともてはやすペニャニエト大統領は大きな試練を迎えています。

今回の事件と米国が支援する麻薬戦争、ペニャニエト政権の改革政策の関係について、次のセグメントでさらに詳しく話します

*ジョン・ギブラー(John Gibler)  メキシコ在住の独立ジャーナリスト。メキシコ関係の2冊の著作がある。Mexico Unconquered: Chronicles of Power and Revolt(『不屈のメキシコ 権力と反抗の年代記』)、 To Die in Mexico: Dispatches from Inside the Drug War(『メキシコで死ぬこと 麻薬戦争の内幕』)  http://en.wikipedia.org/wiki/John_Gibler

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字幕翻訳:中野真紀子