巨大種子企業に立ち向かうカナダの一農民 農民の権利と種子の未来とは?

2010/9/17(Fri)
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26分
ドイツのボンに集まった約80人のライトライブリフッド賞受賞者たち中に、カナダの農民パーシー・シュマイザーの姿がありました。受賞理由は、生物多様性と農民の権利を守るための勇気ある行動、すなわち巨大バイオ企業モンサントに対して戦いを挑んだダヴィデのような行動です。その発端は、隣家が育てていたモンサントの遺伝子組替えナタネの花粉が風で飛ばされシュマイザーの畑に混入し、50年かけて改良を重ねた自家開発の品種品種を汚染した事件でした。取り返しのつかない損失に打ちひしがれるシュマイザーに追い打ちをかけるように、モンサントは自社のGM種子を無断で栽培したとしてシュマイザーを特許侵害で訴え賠償金を要求したのです。あまりの理不尽と傲慢なやり方が彼を奮い立たせ、農民の権利のための戦いが始まりました。シュマイザー夫妻の戦いの記録を通じて、モンサント社と遺伝子組換え産業の危うさが浮き彫りになります。
世界の遺伝子組み換え(GM)種子パテントの9割を持つというモンサント社は、自社の開発した種子の他はどんな植物も枯らしてしまう強力除草剤ラウンドアップとのセットで世界中にGM種子を売りこんでいます。化学薬品の使用を減らし、収穫も増えるという触れ込みに、カナダをはじめ各国政府は十分な安全性の試験もなくモンサントのGM種子を承認しました。しかし、農民に種子の保存を許さない一方的な契約、違反行為の監視や訴訟を武器にした農民への脅し、金を使った政治家への働きかけなど、自社の遺伝子特許利権を守るための強引なやり方には欧州を中心に批判がたかまってきています。

もちろん、遺伝子組み換え種子種が生物体系に及ぼす影響も大いに危惧されます。例えばターミネーターと呼ばれる自殺種子は、実を結んでも発芽しない遺伝子が組み込まれています。農民に毎回かならず種子を購入させるための発明ですが、そんなものが在来種と交配すれば、在来種も発芽しなくなってしまいます。私企業の都合のために種子の未来が脅かされるなど、とんでもないことです。
  こんなものが出てくる背景には、遺伝子という生命の根源に特許権を認め、特許権の管理を通じて地球の共有資産であるはずの種子の流通と多様性を支配するという考え方があります。世界の食糧生産の支配をもくろむアグリビジネスの野望に、シュマイザーは鋭い警鐘を鳴らします。(中野)

★ ニュースレター第38号

(2011.3.21)

★ DVD 2010年度 第4巻

「巨大リスクと利益」に収録

パーシー・シュマイザー(Percy Schmeiser)
カナダの農民 1997年にライトライブリフッド賞を受賞

Credits: 

字幕翻訳:小椋優子/校正:桜井まり子
全体監修:中野真紀子/サイト:付天斉