警官か兵士か?ファーガソンで市民の抗議に地元警察は戦争なみの軍備で対応

2014/8/15(Fri)
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ミズーリ州のファーガソンで2014年8月、白人警官がアフリカ系アメリカ人のティーンエイジャー、マイケル・ブラウンを射殺した事件で、11月末、セントルイスの大陪審が警官を起訴しないという裁決をくだしました。この決定を受け、地元ファーガソンはもちろん、全米各地で抗議運動が繰り広げられています。

米国で、黒人が警官の手で射殺されるのは、珍しいことではありません。その中でマイケル・ブラウンの事件が多くの人々の心をとりわけさかなでしたのは、ひとつには「武器をもたずに通りを歩いていただけ」の彼が「手をあげて抵抗しないジェスチャをしていたのにも関わらず、警官に射殺された」という目撃証言があったからです。しかも、遺体は数時間、衆人環視のまま路上に置かれたままでした。米国で人種差別など昔の話としたい人は大勢いますが、ミシェル・アレグザンダーがThe New Jim Crow: Mass Incarceration in the Age of Colorblindness(『新たな黒人隔離:カラーブラインド時代の大量投獄』)で明らかにしたように刑事・司法制度には、露骨な人種差別が制度化されてはびこっています。

ファーガソンは、大多数が黒人住民であるコミュニティを白人が圧倒的多数を占める警察が強権的に取り締まるという、火だねを抱えた街でした。そんな緊張をはらんだ背景で起きた事件で、人々の怒りの火に油を注ぐことになったのが、射殺事件直後の治安当局の対応でした。市民による抗議に軍隊なみの武装で立ち向かったのです。

これではあまりにもイメージが悪いと連邦政府のエリック・ホルダー司法長官ですら地元警察による「軍事装備と軍車両の配備」が「送り出すメッセージを深く懸念している」と述べました。しかし、ホルダーが口にしなかったのは、連邦政府が警察への軍隊装備の提供に一役買っていることです。ニューヨーク・タイムズ紙の報道によると、ファーガソンでパトロールにあたった装甲人員輸送車「ベアキャット」の購入代金36万ドルを助成したのは国土安全保障省です。ファーガソンの抗議行動に対処した警官が身につけていたボディアーマー(胴体保護具)の大半も連邦政府の資金で購入さ れました。著書Rise of the Warrior Cop : The Militarization of America’s Police Forces(『警官戦士の誕生:米警察の軍隊化』)で、テロとの戦争開始後の米警察の軍隊化をテーマにしたラドリー・バルコと、ファーガソンの地元活動家2人が軍隊化が市民と警察との対決を深める現実を語ります。

制度に取り込まれた不正は人種差別的な司法・刑事システムにとどまりません。新自由主義政策の推進にじゃまなマイノリティ層の投票を阻むために、共和党が推進する投票者ID提示法がさまざまな州で制定されています。また、警察の軍事化は人種を超えて市民運動に威嚇を与えています。ファーガソンの大陪審裁決をきっかけにまきおこった抗議行動が人種の枠を超えて拡がっているのもそのためです。「テロとの戦い」が世界各地に新たな火だねをまく結果をもたらしたのと同じように、警察の軍事化は市民を敵にまわし弾圧を強めて終わるのです。(大竹秀子)

*ラドリー・バルコ (Radley Balko): ジャーナリスト。著書に Rise of the Warrior Cop: The Militarization of America’s Police Forces(『警官戦士の誕生:米警察の軍隊化』。ワシントンポスト紙のブロガーでもある。

*パトリシア・バインズ (Paricia Lamkin): ミズーリ州ファーガソンの民主党委員委員会メンバー。

*レニータ・ラムキン (Rev. Renita Lamkin): ミズーリ州ファーガソンの聖ジョン・アフリカン・メソジスト教会の牧師。警官による黒人少年マイケル・ブラウン射殺事件への市民の抗議行動に参加して警官が発射したゴム弾で負傷した。

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字幕翻訳:川上奈緒子 校正:大竹秀子 監修:桜井まり子