オークランドからニューヨークまで 警察による占拠抗議運動の取り締まりは 「新軍事都市」の前触れ

2011/11/16(Wed)
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戦場にいるのかと見まがうばかりに武装した警察官が、非暴力のデモ参加者に襲いかかる光景が米国で続きました。特に2011年秋から2012年にかけて、カリフォルニア州ではオークランド占拠運動に対する警察の激しい弾圧が続き、大量の逮捕者や負傷者が出ました。カリフォルニア大学でも、腕を組んで座り込みをする学生たちに催涙スプレーを順番にかけていくなどの過剰な取り締まりが行われ、広く非難を呼びました。警察の軍備増強について英国ニューカッスル大学のスティーブン・グラハム教授に聞きます。

この問題は都市の変容という広い視角から考えることが重要だとグラハムは言います。米国では1990年以降、ニューヨークのジュリアーニ市長の治安政策に代表される「ゼロ・トレランス(寛容なき取締り)」が実施されました。この厳しい取り締まりの背景には、ニール・スミスの言う「失地回復主義」(revanchism)があるとグラハムは指摘します。失地回復主義とは、消費とビジネスが集中する都市空間を、そこにそぐわない人々から取り戻すという富裕層の言説です。排除の標的になるのはホームレスや物乞いなど都市下層の人々です。こうした取り締まりは物理的な排除(eviction)を伴い、監視カメラなどの技術の進歩がそれに追い打ちをかけました。メキシコに対する麻薬戦争で警察の軍事化がいっそう加速したことも大きな要因でしょう。

治安に名を借りた排除が横行する社会では、都市の公共空間への規制も強まります。「都市は政治的空間であり、社会的政治的な変革をもたらすために使われるべき場所だ」とグラハムは言います。

ウォール街占拠運動が象徴するものは、公共空間を「99%」が占拠することで政治を人々に取り戻す、「99%の失地回復」ではないでしょうか。(桜井まり子)

*スティーブン・グラハム(Stephen Graham):英国ニューカッスル大学の都市社会学教授。最新著は、Cities Under Siege: The New Military Urbanism (『包囲される都市 新たな都市の軍事化』)

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字幕翻訳・サイト作成:桜井まり子/全体監修:中野真紀子