「戦争犯罪人は来ないで」 コンドリーザ・ライスがラトガーズ大学卒業式典を辞退

2014/5/5(Mon)
Video No.: 
3
8分

神戸女学院大学翻訳チーム第二弾は、先週の動画に引き続き、米国の大学キャンパスでの積極的な直接行動の事例です。

ジョージ・W・ブッシュ大統領の国務長官を務めたコンドリーザ・ライスは、ニュージャージー州の名門公立校ラトガーズ大学の卒業式典に招かれ祝辞を述べることになっていました。でも学生や教職員のあいだから強い抗議の声が上がり、キャンパスでの座り込み運動に発展したため、ライス本人の辞退によって取り止めになりました。

キャンパスに飛び交った嘆願書は、「イラクに大量破壊兵器が存在すると欺いて」米国民を侵略戦争に駆り立てたとして、ライスが2003年のイラク侵攻で果たした役割を理由に招待の撤回を求めています。この侵略によって多くのイラク市民が戦火に巻き込まれて死亡しましたが、それだけでなく国家の統治機構が完全に破壊されたため権力の真空状態が起きてイラクは大混乱に陥り、何百万人もが難民となり、宗派や民族集団が割拠して、もはやイラクは一つの国として存在していません。最近の「イスラム国」(ISIS)の急速な台頭も、もとをただせばこの時の統治機構破壊が原因です。ライスは当時ブッシュ政権の国家安全保障担当大統領補佐官でしたが、こうしたイラク国家の破壊を「建設的な混沌」と呼んで、むしろ意図的に推進していたのです。サミ・ラスーリは、同じパターンがその後リビアでもエジプトでもチュニジアでも踏襲されていると指摘しています

このような惨状を引き起こし世界を危険に陥れたブッシュ政権ですが、その戦争犯罪が裁かれることはなく、政権中枢にいた人々はひとりも処罰されていません。誰も責任をとらずにすむのなら、こうした暴挙が何度でも繰り返されるでしょう。彼らの大罪を忘却せず、生涯の汚点として背負わせるべきだと、学生代表のカーメロは言います。

これに続き、ライスが辞退した翌週にマサチューセッツの名門私立女子校スミス・カレッジでも、学生や教職員の抗議運動によって、クリスティーヌ・ラガルドIMF総裁の卒業式典への出席が本人の辞退によって取りやめになりました。学生たちによれば、国際通貨基金(IMF)は貧しい国々に誤まった開発政策を押し付けて経済発展を阻害し、実質的な植民地支配の継続と女性の抑圧や虐待を助長するのに中心的な役割をはたしたことが抗議の理由です。

米国の大学では今も学生たちが社会や政治の問題に対し積極的に行動を起こしています。でも多くの学生が経済問題を抱えているのです。オキュパイ運動でも訴えられていたように、米国では学生ローンの浸透により多くの学生が負債を抱えていますが、若年層の就職難とあいまって債務地獄に陥りかねない深刻な事態です。それでも前向きに現状の変革をめざす学生たちの運動は活発で、先週紹介したスタンフォード大学が化石燃料業界への投資をやめると決断した事件のように、積極的な行動により実際に成果を勝ち取っているのが注目されます。(中野真紀子)

*カーメロ・シントロン・ビバス(Carmelo Cintrón Vivas)「ノー・ライス」運動の広報担当者で、ラトガーズ大学の様々な学生運動に活躍している学生。
*バハール・アズミー(Baher Azmy)憲法権利センターの法務担当者

Credits: 

神戸女学院大学翻訳チーム
翻訳:福島 純子 / 校正:田辺 希久子