現代の戦争の姿を決定づけた自動小銃の発明者ミハイル・カラシニコフ 94歳で死去

2013/12/24(Tue)
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7分

元ソ連軍の技術者ミハイル・カラシニコフが設計したカラシニコフ自動小銃、別名AK-47は、世界で最も多く使用されている銃器の一つで、現在およそ1億丁が出回っているとみられます。人気の秘密は簡単な構造で、安価で信頼性が高く、手入れも簡単なことです。かつては反植民地、反帝国主義の解放闘争で大活躍した「革命」を象徴するような武器でした。冷戦時代にソ連が植民地の独立運動など西側に対抗する勢力に無償でどんどん配り、世界中に広まったためです。欧米のポップカルチャーでは今もゲリラ、というか「敵」を示すアイコンです。

しかし、ソ連体制が崩壊してロシアが誕生した後は、状況が一変します。膨大なカラシニコフの在庫は国家の管理をはなれ、利益だけを求める闇商人の手に落ち、紛争地で大量に売りさばかれるようになりました。特にアフリカの独裁者たちに銃を与えて天然資源を獲得する戦争ビジネスは、コンゴ シエラレオネ、アンゴラなどの紛争を長引かせ、子ども兵士が利用されるという問題も生み出しました。

NPO国際政策センターで武器と安全保障問題を担当するウィリアム・ハートゥングは、カラシニコフ銃こそが戦争を可能にしている20世紀最大の大量殺人兵器だと言い切ります。この銃は1990年代に世界各地の内戦や紛争における主役でした。子供でも使いこなせる小型銃で1分間に600発も撃てる大量殺人兵器の出現により、それまでとは戦争の様相が一変し、一つの紛争を鎮めてもすぐにまた新たな武力衝突が起こり、外交による解決が難しくなってしまったとハートゥングは言います。

ミハイル・カラシニコフは生前、自分の設計した銃が世界各地に紛争を生み出しているという非難に対し、祖国を守るために開発した銃が他国の紛争に使われてしまったのは心外だ、と反論していました。世界でこんなに出回ってた銃の発明者でありながら、彼自身がお金儲けをしたわけではないし、ソ連体制崩壊後のことまで責任を問われるのもちょっと気の毒な気もします。でも、ハートゥングの手厳しい批判は、「武器そのものは中立であり、善用も悪用も使い手しだいである」という考え方を否定するものです。人が戦争をつくるのではなく、武器が戦争をつくるというハートゥングの指摘は、長年にわたって米国の銃規制を阻止しつづけている全米ライフル協会とのからみによって、いっそう鮮明に伝わってきます。短いですが、いろいろ考えさせられる動画です。(中野真紀子)

*ウィリアム・ハートゥング(William Hartung) ニューヨークの世界政策研究所武器情報センター長を15年務めた後、ワシントンのシンクタンク「ニューアメリカ財団」でアメリカ戦略プログラム上級リサーチフェローをつとめ、現在は、国際政策研究所の武器及び安全保障研究プロジェクトの責任者。『ブッシュの戦争株式会社』、『ロッキード・マーティン 巨大軍需企業の内幕』などが邦訳されている。

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字幕翻訳:平田理恵子/ 校正:中野真紀子