経済学者ジェフリー・サックス:米国の違法な経済制裁がベネズエラを荒廃させ4万人以上を死なせた
著名な経済学者のジェフリー・サックスが、ベネズエラに対する米国の経済制裁措置は「一般市民に対する集団懲罰」にあたり、国際法にも国内法にも違反すると論じてます。『集団懲罰としての経済制裁 ~ベネズエラの事例』という経済政策研究所の報告書での主張です。
米国政府が2017年8月からベネズエラに課した経済制裁は、政府よりも一般市民が大きな影響を受けるもので、特に低所得層や社会的弱者が被害を受けています。摂取カロリーの低下で病気や死亡率が上昇し、経済崩壊で数百万人が国外に逃れました。制裁の被害は甚大であり、2017年から18年にかけて4万人以上の死者が出たと推測されます。このような制裁は、ジュネーブ条約やハーグ条約で禁止されている「民間人に対する集団懲罰」にあてはまるとサックスは主張します。国際法にも、米国が締結した諸条約にも違反しており、米国の国内法に照らしても違法であると。
事態をさらに悪化させているのが、2019年1月28日以降に次々と発せられた大統領令による追加制裁と、大統領を自称する野党代表フアン・グアイドを米国が承認して二重政権の形にしたことです。これにより、新たな金融貿易制裁体制が築かれ、ベネズエラは国際資本市場から締め出され、政府資産は没収され、石油収入が激減して食糧も医薬品も買うことができなくなりました。ハイパーインフレが起き、経済は崩壊しました。
このような措置は、圧力を加えるというよりは、わざと社会の混乱を引き起こそうとするものです。目的は最初からマドゥーロ政権を倒すことだと、サックス教授は指摘します。米国の制裁は、いまや外国政府を倒す道具になっているのです。
米国の経済制裁はイラン経済に大打撃を与えており、ニカラグアやキューバにも圧力をかけています。しかし、このような米国の力づくの外交は決して思い通りの結果をもたらすことはなく、いたずらに相手国に荒廃をもたらすだけに終わっています。もはや同盟国にも迷惑がられている愚劣で違法で非人道的な経済制裁は、はやく終わりにすべきです。(中野真紀子)
*ミゲル・ティンカー・サラス(Miguel Tinker Salas):ベネズエラ出身のカリフォルニア州ポモナ大学教授。 *ジェフリー・サックス(Jeffrey Sachs)コロンビア大学持続可能開発研究所の所長。最近、経済政策研究所に『集団懲罰としての経済制裁 ~ベネズエラの事例』という報告書を発表
字幕翻訳:金谷祥子/全体監修:中野真紀子