NSAの内部告発者トーマス・ドレイクとオバマ政権による迫害 (1)

2012/3/21(Wed)
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12分

国家安全保障局(NSA)の内部告発者、トーマス・ドレイクに話を聞きます。彼はNSAの浪費や不適切な管理、憲法違反の疑いのある活動を報道機関に告発したため、当局の迫害を受けました。スパイ防止法に違反したとして起訴され、最長で35年の投獄という危機に直面しました。でも実際の起訴状にはスパイ行為の具体的な指摘はなく、政府の機密文書を自宅地下室に保管していたという微罪しかありませんでした。結局、この微罪をドレイクが認めるかわりに他の容疑はすべて取り下げるという司法取引が成立し、昨年2011年に裁判は結審しました。当時司法省の首席報道官だったマシュー・ミラーは今ごろになって、「起訴したのは勇み足だった」などと話していますが、明らかに司法を使った内部告発者への嫌がらせです。

オバマ政権は内部告発者に対して米国史上かつてない迫害を加えており、ドレイクをはじめ6人もの元政府職員がスパイ防止法の違反で起訴されています。ドレイクの弁護士で自身も内部告発者であるジェスリン・ラダックは、「これはジャーナリスト弾圧のための地ならしです。政府は公職機密法(Official Secrets Act)を米国にも導入しようと狙っているのです」と言います。公職機密法は英国をはじめとする英語圏の国々で制定されている同様の法律をさし、公務員に政府機密情報の秘匿を義務付けるものですが、米国では政府情報は基本的に開示すべきものとの考えが強く、これまで導入は阻止されてきました。しかし9.11を契機に内部告発を封じ込めようとする政府の動きがどんどん強まっているようです。日本の秘密保全法案との関連も気になるところです。(中野真紀子)

NSAが国民監視プログラムにのめりこんだ経緯など、詳細は後半で・・・

*トーマス・ドレイク(Thomas Drake)国家安全保障局(NSA)の内部告発者。2011年のライデンアワー賞を受賞し、サム・アダムズ賞をジェスリン・ラダックと共同受賞 
*ジェスリン・ラダック(Jesselyn Radack) 元法務省倫理顧問。現在は米国の中心的な内部告発団体Government Accountability Project(政府説明責任プロジェクト)で国家安全保障および人権問題を担当。新著はTRAITOR: The Whistleblower and the "American Taliban"(『反逆者 内部告発者とアメリカのタリバン』) 

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全体監修:中野真紀子