【Express】 福島原発事故の深刻化に立ちあがる市民 米仏はそれでも推進?

2011/6/10(Fri)
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福島原子力発電所の事故は3カ月目を過ぎてようやく東京電力が原子炉3基で完全なメルトダウンがおきていたことを認め、最初の一週間で大気中に放出された放射性物質の推定量もいっきに2倍に訂正しました。政府や東電の情報隠しは犯罪的で、住民たちはやむなく自ら放射能の測定を始めています。事故は収束どころか悪化の一途で、現在は大量の使用済み燃料を抱える4号機の崩壊が心配されています。日本市民の反応、使用済み核燃料プールの危険性、原発推進をめぐる世界各国の思惑などについて、環境活動家アイリーン・スミス氏と米国の元エネルギー庁高官のロバート・アルバレス氏に聞きます。

スミス氏が、子供の年間許容被曝量を20ミリシーベルトとした文部省に福島の父母が撤回を迫って直訴したことを紹介し、「100ミリシーベルト浴びても心配ない」とのたまう福島県放射線健康リスク管理アドバイザー山下俊一長崎大教授のトンデモ発言を世界にさらしたことに、日本の市民運動からは大喝采でした。

傾きはじめた福島第4号機のプールで湯気を上げている大量の使用済み核燃料。特別な安全設計もない原子炉建屋にどんどん溜まっていく使用済み核燃料こそが、米国式原子炉の最大の弱点だとアルバレス氏は指摘します。というのも核燃料廃棄物の最終処分場が55年かけても未だ見つからないためです。行き場のない核廃棄物が原子炉にどんどん蓄積し、プールが破損する事態になれば周辺の広大な地域に人が住めなくなります。

こんな中でオバマ大統領は原発推進の再開を宣言し、海外にもさかんに売り込みをかけています。でも、これはどこまで本気で実行されるのでしょう? 今の米国には、そんな技術もインフラも、財源さえもありません。それでも建前は原発推進です。世界の原発市場をめぐって米、仏、日本がしのぎを削り、韓国やロシアも参入しているからです。出てくるゴミの始末もできず自国ではもう行き詰った危険な技術を、将来の武器転用の可能性をえさに新興国に売り込もうとするのは、この世界をますます危険にさらすことにならないでしょうか。(中野真紀子)

*ロバート・アルベレス(Robert Alvarez):元米国エネルギー長官の上級顧問で現在は政策研究所の上級研究員。最近の報告書は「米国の使用済み核燃料プール: 破滅的な貯蔵リスクを軽減するために」("Spent Nuclear Fuel Pools in the US: Reducing the Deadly Risks of Storage" )
*アイリーン美緒子スミス(Aileen Mioko Smith):グリーンアクション事務局長
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字幕翻訳:中野真紀子/全体監修・サイト作成:桜井まり子